第二幕、御三家の嘲笑
「……いい加減松隆くん拗ねるのやめたら?」
「拗ねてない」
「笑顔が拗ねてるんだよ」
桐椰くんに負けた松隆くんがソファに寝転んで拗ねている。別荘に帰って来てシャワーを浴びて着替えた後も未だ拗ねている。子供か!と心でツッコんで、同じツッコミを桐椰くんにもしていたことを思い出した。桐椰くんはといえば松隆くんに勝ってご機嫌に髪を拭いている。いずれにせよ単純だ。やっぱりこの二人は子供だ。月影くんは丸一日動いて疲れたらしく、三人掛けのソファの端に座ってうとうとしている。月影くんの隣なら松隆くんも桐椰くんも刺激することにはならないだろうと座ったのに、月影くんからは邪魔そうな目を向けられる。
「ケチ」
「俺は何も言ってないが」
「目が邪魔だって言ってる」
「分かってるならどけ」
「三人掛けのソファで端と端に座るって仲悪そうじゃない?」
「じゃあ俺と一緒に寝る?」
「遠慮します」
拗ねてるせいでいまいち笑顔を浮かべきれてない松隆くんの提案のような要求は却下した。月影くんは欠伸を噛み殺しながら「寝るならいつも通り遼とにしたらどうだ」と妙なことをいった。松隆くんの顔と振り向いた桐椰くんの顔が心外そうに「は?」としかめられる。月影くんは無視してスマホを見ている。
「なんで? 桐椰くんと松隆くんいつも一緒に寝てるの?」
「気持ち悪いこといわないでくれる?」
「ソファに寝るときは互い違いで寝てるのが常だな」
すっと月影くんがスマホを見せてくれた。徐に一体何だろう、と覗き込むと、二人掛けのソファに桐椰くんと松隆くんが寝てる写真だった。お互いの頭の方向に足を向けているけれど、ソファのサイズのお陰でお互いの膝下辺りを枕にしている。二人でソファに収まってしまっているのに窮屈そうな様子は欠片もなく、同じタオルケットの端と端を持って寝ている。これは……。
「松隆くんと桐椰くんにこんな可愛い頃があったなんて……!」
「おい駿哉お前何の写真見せてやがる!!」
「ねぇ駿哉今見せてたのなに」
「と、一緒に寝ているのが常でな」
「やるじゃないですかツッキー!」
桐椰くんが慌てて月影くんのスマホを取り上げたけれど、ロックがかかっているらしく「くそっ」と毒づいている。松隆くんもこめかみに青筋を浮かべて月影くんのスマホを睨んでいるから、月影くんに関係する暗証番号でも考えているに違いない。