第二幕、御三家の嘲笑



「でも月影くんがこんな写真撮るなんて珍しいね。月影くんの写真フォルダってメモ代わりに撮ったプリントとかスクショとかばっかりだと思ってた」

「その通りだ」

「その写真は弱味のメモだとかそういうことですか?」

「彼方兄さんから送られてきたから保存してあるんだ」


 あぁ、物凄く納得がいった。彼方なら撮りそうだ。中学三年生なら高校三年生の彼方が一緒に遊びに来ててもおかしくないし……、と考えて別の意味でおかしいことには気が付いた。受験生なのに余裕だったんだね、彼方……。


「ねぇ、そういえば松隆くんのお兄さんの写真ないの?」

「彼方兄さんからのものを探せばあると思うが、興味あるか?」

「松隆くんと似てないっていうからさー、どんな顔なんだろうと思って。桐椰くんとこは遥くんがミニ桐椰くんで可愛いのに」

「確かにあの二人は顔がほとんど同じだな」


 私の要望を聞いてくれた月影くんは暫くスマホを見ていたけれど、「見当たらないな」とスマホをしまってしまった。残念。


「君はどうなんだ」

「え、何が?」

「写真フォルダの中身の話だ」


 あまりにも脈絡のない話だったので純粋に聞き返してしまったのだけれど、更によく分からない話に眉を顰めてしまった。


「それなりに性格が出ると思わないか?」

「あぁー……まぁそうかもしれないですね……」


 月影くんが私の性格に興味を持つとは思わなかったのでどもってしまった。いや、最近は仲良しだから月影くんも多少なりと私に興味を抱いて……いるわけがないか。


「手っ取り早く見ます? 私のアルバム」

「そこまで興味はない」

「だったら最初から聞かないでよ! コントしてるんじゃないんだよ私!」

「君の写真フォルダは人の写らない風景画で埋まってそうだ」


 予想が当たればそれでいいと言わんばかりの投げやりな言葉だったので、思わず「残念でしたー」と返してあげた。


「私はスマホのカメラ機能というものを使ったことがありませーん」


 月影くんは妙なものでも見るように一瞬詰まった。え、何か変なこと言ったっけ、なんて私が怪訝な顔をしてしまう前に、「あー気持ちよかった。このまま寝たいわー」と言葉通り気持ちよさそうな声のよしりんさんがお風呂から出て来たので、その話題は終わった。

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