第二幕、御三家の嘲笑



「……そんなこと言ったら、そもそも私は……、」

「俺と付き合う気はないって?」


 何度も何度も断られると傷付くなぁ、と言った声は飄々(ひょうひょう)としていたけれど、その目が笑ってなかった。ぎゅう、と心臓が締め付けられる。痛みにも似た感覚だった。


「……ごめん」

「本気で謝らないでよ。本当に望みないみたいだから」

「……友達じゃ駄目なの?」

「だってそれは遼や駿哉と同じなんだろ?」


 だから、それじゃ駄目なの?


「桜坂に特別に想われたいって言ってるんだよ、俺は。桜坂にとっての駿哉と遼が同じでも、桜坂にとっての俺と遼とは違うものであってほしいって言ってるんだよ」


 顔が、燃えるように熱くなる。告白を――告白している理由を、ここまで懇々と説く人なんて、そうそういないだろう。少なくとも私に経験はなかった。そのせいで言葉に窮した。。


「どうする、桜坂。俺のお願いは別の機会にとっとく?」


 狙い澄ましたように通りかかった巨大なお神輿が、人だけで埋まっていた道を占領していた。お陰で視線を彷徨わせてもよしりんさん達は見えなかった。お神輿が通り過ぎるまできっと一分か二分程度、何も返事をせずにやり過ごすことはできる。通り過ぎてしまいさえすれば、よしりんさんが平均身長より頭一つ抜けているからきっと見つけやすいはずだ。それでも――……。ぐるぐると、頭の中で決断の理由が巡っている。

 松隆くんのお願いは、さっき正直に言葉にしてしまった通り、とても細やかなものだ。これから一緒に回るといっても、こんなところで一緒に過ごす時間なんてたかが知れてる。でも、わざわざ桐椰くんも一緒に来ているお祭りで、これ見よがしに松隆くんと消えることなんてない。ただ、桐椰くんが私に向けている感情は正確には不明で、保留のままだ。それでも、その迷いは気に掛ける必要のないものではない。

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