第二幕、御三家の嘲笑
「松隆くん……、ごめんなさい……」
「謝んないでいいよ……余裕って思ったの、俺だし……」
漸く答えてくれたのは、普段からは想像もできない弱弱しい声。それでも安心させようとするようにその指先が頬を撫でてくれる。
「……顔、痛かっただろ……」
「そんなのどうでもいいから!」
松隆くんの指に触れると、冷たかった。いつもならだからなんだというわけでもないのに、どうしてか、真夏に体温を失ってしまているように思えて、怖くなった。
「大丈夫? ねぇ、松隆くん、」
「桜坂……、」
冷たい指先が、頬の上を滑る。そのまま、私のうなじを髪ごと引き寄せようとする。その手に促されるがまま、唇と唇の距離が縮まる。
「……ごめん……、桜坂……」
はっ、と、唇に熱い吐息がかかった。
「……お願いします。それから、今伝えた子とは別に、男が二人倒れています。二人共大学生くらいです。一人は意識がありません。一人は腕を刃物で刺されたみたいです。刺された当時の状況は、私には分かりません」
妙に、遠くに聞こえていた。今の状態を淡々と伝えるよしりんさんの声が。