第二幕、御三家の嘲笑







「亜季ちゃん」


 ふ、と顔を上げる前に、隣にどっかりと座りこむ人がいた。よしりんさんだ。腕を組んでいるけれど、その顔は優しく笑ってくれていた。


「顔、暫くは痣が残るかもしれないけれど、一週間もあれば綺麗に消えるそうよ。良かったわ」

「……松隆くんは、」

「あれは男だからいいのよ。しかも傷はほとんど残らないみたいだし、王子顔に問題なし」


 私の表情が曇ってしまったのか、よしりんさんは慌てた様子で「いやほんとに! 大丈夫なんだって! ていうかあの子中学生のときにヤンチャしてるから傷くらい元からあるし!」と付け加えた。それでも私が何も答えないせいで沈黙が落ちる。それに耐えきれないように、よしりんさんが再び「総ちゃんから聞いたんだけど、元々五人いたんだって?」と口を開いた。


「一人が刺されたっていうから警察も来てたけど、総ちゃんはお咎めなしっていうの? 亜季ちゃんも襲われたし、殴られたし、相手ナイフ持ってるし? 総ちゃんが色々言ってただけだからアタシにはよく分からないんだけど、相手がナイフ持ってたらさすがに厳しいこと言われないのかしら? 警察の人が亜季ちゃんにも話聞きたいみたいなこと言ってたから、後で聞かれるかも。あ、でも本当に話を聞くだけみたいよ。なんか前にも似たような事件あったらしくて、同じ人だろうからちゃんと調べて捕まえたいとかそんな……。とりあえず、二人共、打撲程度……って言ったらあれだけど、その程度で済んで良かったわ本当。なんか最近高校生が殴り殺された事件あったらしいのよ、もしかしたらその犯人なのかなって……」


 よしりんさんは妙に饒舌(じょうぜつ)だった。私を励まそうとしているのが分かりやすく伝わってきた。

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