第二幕、御三家の嘲笑



 模試の連絡も大したものではなく、いよいよセンター試験まで何カ月で一年を切るまですぐだとか、日付に直すと何日だとか、激励 (と呼んでいいのか分からないような軽い調子だったけれど)がされた。花高はエスカレーター式で大学に進学できるわけではないので、一応受験の関係のない人はいない。

 午前中の数時間、流れ作業のような日程を終え、帰る準備に入る。とはいえ支度することなどなく、桐椰くんに送ってもらうことになっている私は後ろを向くだけだ。


「ねぇ桐椰くん、桐椰くんは松隆くんに会ったんだよね? こっち帰って来た後」

「ん? あぁ……」

「松隆くんどんな感じだった?」

「いや別に……、いつも通りだったよ。怪我は大体治ってるし、夏期課題面倒くせーから写させろって」


 それ以上に何か気になることでもあるのかと桐椰くんは言いたげだけれど、何て続ければいいだろう。私がお見舞いに行っても松隆くんは会ってくれないんだけど、桐椰くんと行けば会ってくれるかな、なんてお願いをしていいのかな。松隆くんが会わないって言ってるんだから騙すような方法を採ってまで会うべきじゃないのかな。そもそも桐椰くんに仲介役を頼んでいいのかな……。


「……それなら、いいや……」


 結局何も言わずにおくことしかできなかった。

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