第二幕、御三家の嘲笑



 私と御三家との関係は、ぐちゃぐちゃだ。どこで歯車が噛み合わなくなってしまったのだろう。最初に契約を結んだときのまま、御三家とは主従関係でいればよかったんだ。それなのに、御三家が仲間として受け入れてくれたから……私がその居場所を安易に喜んでしまったから、こんなことになってしまった。


「……帰るんだろ。送ってく」

「……うん」


 何かを探るように訊ねられる気配はない。帰り道も心配といえば心配ではあるんだけどな、と鞄を肩にかけたとき「桐椰くーん」と飯田さんが桐椰くんを呼んだ。


「さっき副島先生が呼んでたらしいよー、だから職員室行きなよー」

「あぁ? らしいってなんだよ」

「だってー、伝言の伝言なんだもーん」


 答えになってない答えをしながら飯田さんは肩を竦めた。その伝言をした誰かの名前くらい言えばいいのでは、と私と桐椰くんの目が同時に告げれば「間宮さんが言ってたんだよー。間宮さんも伝言だって言ってたけどねー」となんとも怪しげな答えが返ってきた。しかも間宮さんというのは、第二次舞浜さん事件で私を溺れさせようとしたメンバーの一人だ。その伝言がもし私宛なら絶対に罠だけれど、桐椰くんならそんな心配はないはず。顔を見合わせて、多分お互いにそんなことを考えた。


「……んじゃちょっと行ってくる」

「いってらっしゃい。教室で待ってるね」

「おう、悪いな」


 別に数学の成績悪くねーのになぁ、とぼやきながら桐椰くんは足早に教室を出て行った。その姿を私と飯田さんと数人のクラスメイトが見送り、思わぬ暇ができてしまった私は再び椅子に座り直す。

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