第二幕、御三家の嘲笑



 妙に意味深な言い方に、やっぱり振り向いてしまった。雅のこととなると必ず反応するんだな、とやはり月影くんには笑われた気がしたけれど、被害妄想だろうか。


「……私を頼むって、なに?」

「寧ろ俺が聞きたい。彼は詳細には言わなかったからな」

「……雅はもう私に会ってくれないってこと?」

「そうは聞こえなかった。ただ彼自身にはできないんだとは言っていた。だから俺が寧ろ君に訊ねたい、君はどうしたいんだ」


 私がどうしたいか? 月影くんがそんな聞き方をするのは珍しい。今日の月影くんは珍しいことだらけだ。月影くんが、私の感情を知りたがったことなんてなかったのに。だから何も準備なんてできてなくて、だからこそ何も答えないことにした。


「……次、雅に会ったら言っといて。ちゃんとシュシュを返しに来てって」

「おそらく会わないだろうな」

「……会ったらでいいから」


 再び踵を返せば、三度目の正直で、もう月影くんは何も口にせず、私が振り返ることもなかった。

 登校日の生徒会室付近は閑散としていた。生徒会が普段は一体何の仕事をしてるのか私にはさっぱりだし、もしかしたらそもそも仕事なんてしていないのかもしれないけれど、談話室代わりに使われることもなく、生徒会室の中からも物音一つ聞こえない。扉の前に立って、ほんの数秒間だけ中の様子を(うかが)っていたけれど何の成果も得られる気配はないので、大人しく扉を開ける。

 物音一つしなかった生徒会室には、窓辺に寄りかかって腕を組む生徒会長がただ一人佇んでいた。

< 384 / 438 >

この作品をシェア

pagetop