第二幕、御三家の嘲笑



「で、どうするの?」

「……私に鹿島くんの指名役員になれっていってるの?」


 指名役員について、飯田さんに聞いて生徒会役員ヒエラルキーの第二位に位置することは知っている。それ以外には、以前蝶乃さんに誘われた時に聞かされた情報。要は絶対服従の秘書だ。


「……随分、性格が悪いね、鹿島くん。御三家の仲間の一人を自分の秘書にしようとか」

「何を早とちりしてるの? まだ指名役員にするなんて一言も言ってないだろ?」


 何……? 鹿島くんの言葉に眉を顰めるも、それ以外に就く役職は思いつかない。無名役員というのも考えられるけど、無名役員は生徒会に虐げられることがないだけの肩書で、役職とは少し違う。だから“生徒会への勧誘”という形をとることには違和感がある。希望役員は寄付金の多寡が問題になるけれど、私の家は一切寄付をしていないしする予定もない。指定役員になるためには生徒の支持が必要だけれど、御三家はさておき私個人にそんな人望はない。

 訝しみ続ける私に、ふ、と鹿島くんは笑った。窓際を離れて此方へ歩み寄って来る。逃げ場はない。十秒と経たないうちに鹿島くんは私の目の前に立つ。


「俺は次期も引き続き生徒会長を務める予定だけれど、今期の生徒会組織を引き継ぐつもりはない。具体的な構想はまだ練ってる途中だけれど、金持ち至上主義の生徒会組織はもうすぐ終わるよ」


 終わる? 金持至上主義の生徒会が?

『最近の希望役員の行動は目に余るものがあるな。人数が増えると目が行き届かない。その方策は考えてる途中だよ』


 確かに、初めて会ったときに鹿島くんはそう口にした。その方策が、金持ち至上主義の生徒会組織の解体? でも金持ち至上主義の生徒会は発足してまだ一年足らずだ。


「そんな毎年毎年組織改革を断行できるのか、って言いたげだね? できるとも。一度絶対的な権力を手にさえすれば、だけどね」


 ――そういうことか。透冶くんの事件を隠蔽することが、金持ち至上主義の生徒会にした理由の少なくとも一つであったことは本当かもしれない。でもそれだけじゃない。ひとたび金持ち至上主義にしてしまえば、その中でトップに君臨する金持ちが組織を掌握することは容易い。人望なんて目に見えにくいものを土台にするより、金という目に見えるものを土台にするほうが、短期的には確実だ。

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