第二幕、御三家の嘲笑



 上手く考えてある。誰にでもできることじゃない、金の力がなければできないことで、金の力さえあればできる。

 虫唾が走る。生徒会組織を(ほしいまま)にして、その目的は一体何だというのだろう。無欲無私が美しいとは言わないけれど、私利私欲のためだと言われても納得するほど私は横暴じゃない。


「……鹿島くんのこと嫌い」


 思わず口をついて出たのは素直な感情で、自分でも少しだけ驚いた。傍若無人な人間を見たからといってその人間を嫌うような偽善者ではないつもりなのに。――自分に害を与えられない限り。

 つまり、私にとって鹿島くんは害を与える人間だと心の中で思ってしまっているということだ。その害悪の内容は、理性的に考えれば雅の件でもあるし、御三家を裏切って生徒会につけという要求でもある。でもそれだけじゃなくて、感情的に、私にキスをした鹿島くんを嫌いだと思わずにはいられない。

 そんな、馬鹿みたいなこと。本当に、馬鹿みたいだ。たかがキスされたくらいで、気持ち悪いとか怖いとか、そんなことを感じて、松隆くんにその感情を吐露してしまったから。そんなことをしなければ、きっと松隆くんはただの御三家のリーダーのままだった。

 “嫌い”の一言に凝縮された、そんな沢山の感情を全て見通したように、鹿島くんは私を鼻で笑う。


「奇遇だね。俺も君が大嫌いだ」


 それなのに、全部分かってそんな告白をしたくせに、私の胸座を掴んで引き寄せて、キスをする。

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