第二幕、御三家の嘲笑
「駿哉も、それしか知らねーの?」
「なんで月影くん?」
「……お前アイツには何でも話すだろ」
「別に何でもは話さないよ」
「駿哉と同じ屁理屈言うんじゃねーよ」
「私も月影くんもそう言うってことはそういうことなんだよ」
桐椰くんが、私を幕張匠だと知ったらどうするのかな。桐椰くんは優しいから、幕張匠との因縁があっても、私との今の関係のせいで頭を抱えてくれるのかな。
「……さっき、菊池がキスより大事だって言っただろ」
「うん」
「お前は、菊池のためにどこまでするの」
「ロマンチックな聞き方するんだね、桐椰くん」
まるで雅のためならその命を投げ出せる?と訊かれている気がして笑ってしまった。私と雅、どちらかが生きる限りどちらかは生きられないなんてファンタジー染みた設定でもあればすぐに生きられないほうに立候補してしまうけれど、残念ながら現実はそんなに甘くない。そんなに甘く、私達を救ってくれない。
「もっとロマンチックにいえば、雅のためならなんでもできるよ、なーんてね」
「……欠片もロマンチックじゃねーだろ、それ」
戯けた私と桐椰くんとには奇妙な温度差があった。その温度差は丁度、舞浜さん達に攫われてもなおBCCに出ると言い張った私と、そんな私の体を心配して怒った桐椰くんと同じくらい。