第二幕、御三家の嘲笑
「何があったかだけ駿哉に話して、菊池のことで脅されてたってことだけは俺にも話して、それで何? お前は結局どうすんの? このまま鹿島に言われるがままずるずるどこまで言いなりになんの? なんでそれでもいいとか言ってんの? なんで、俺達の気持ち考えてくれねーの?」
考えてるよ。ちゃんと考えて、選んでるんだよ。大体、鹿島くんの言いなりになんかなってないよ、今回はちゃんと逆らったよ。キスはその代償だって話したじゃん。生徒会への誘いを断ったのだって、私が生徒会に入ったら御三家が裏切られたと感じると思ったからだよ。ちゃんと御三家の気持ちを考えたよ。それの何がいけないの。
そんな文句が、喉までせり上がってきていて、今にも飛び出そうだった。でもそれを口にするのは、恩義の押し売りだ。
「……桐椰くんには関係ないよ」
「だからなんでそういうこと言うの、お前は」
「だって関係ないんだもん」
「関係あるだろ。俺達のこと考えろって言ってんだから」
「そもそも私のことじゃん。私なりに色々考えてるんだから口出さないでよ」
「だからそれを言ってくれないと何も分からないって言ってんだよ」
「言ったところでどうにもならないじゃん!」
「言ってくれないと分かんねぇって言ってんだよ!」
「少なくとも御三家に悪いようにはしないんだからほっといてよ!」
「だからお前は俺達に悪いの意味を履き違えてんだって話をしてんだよ! お前は自分だけ傷付いときゃ周りは幸せとか思ってんだろ! お前が傷ついて俺達が何も感じないとでも思ってんのかよ!?」
きっと、段々とヒートアップしたその口論は、セミの声よりもうるさかった。そして桐椰くんの言葉に思わず詰まってしまったその時に、家の前でなされた口論だったせいか、玄関扉が開く音がした。