第二幕、御三家の嘲笑
無為な日々の無意味さを壊して
「ねぇ、雅って好きな女の子いたことある?」
唐突な質問に目を点にした。隣で胡坐をかいてフライドポテトを咥えるその表情には照れもからかいも欠片もない。お陰で、続いて目をぱちくりさせてしまう。
「……えーっと……なんで?」
「……なんとなく」
指先でフライドポテトの先を指に押し込み、彼は、そう言った。机の上に広げた三人分のハンバーガーとフライドポテト。そのうちの一人分を食べながら、彼は不思議そうに頬杖をつく。
「なんかさー、そういうの、分からない星の下に生まれたんだよな、俺」
「星の下ぁ? 随分と壮大な話だな、それは」
「でもそうだと思うんだよなぁ。この間、初恋も未だだなんて有り得ないって言われて」
それでも初恋が未だなのは事実。その事実が他人から見て珍妙だというのなら、もう運命だとかそういう適当な言葉で片付けるしかないじゃないか。彼の横顔はそう続けた。
「だから、さ。雅は俺と同じ人種なのかな、どうなのかなって」
「うーん……。俺は好きな女の子くらいいたことあるのかな」
「あるのかな、って何で疑問形?」
「だって小学校の初恋とかカウントする? あの頃はちょっと可愛い目立つ女の子なら好きだって」
「ふーん、可愛ければ好きなのか……」
分からないなぁ、と彼は呟きながらフライドポテトを口に押し込む。
「でも可愛いって思ってる時点で好きなんじゃ? 少なからず特別なんじゃねーの?」
「そういうのじゃなくてさ、一般的な可愛いってあるだろ? アイドルなんて一般的に可愛いじゃん」
「……ふーん」
やっぱり分からない、と彼はぼやく。眉間に皺を寄せて、どうしてそこまでこんなことで考え込むのだろう。