第二幕、御三家の嘲笑



 今日も同じだ。制服が乱れるのにも構わず、ソファに座ってそのまま横になったような恰好で寝ている。履いているスカートは平均的な女子のスカートより長いはずなのに、寝転ぶに合せて引っ張られるせいで太腿が見えそうだ。足白いなぁ、と頬杖をついて眺めてしまう。遼はBCCのときに倒れた桜坂を抱き上げてたから、その時に足の感触は知ってるんだっけな。それにしたって、よくこの姿を見ながらパーカーだけ掛けて帰れるもんだ。いや、寧ろこの姿だからパーカーだけかけて急いでこの場を去ったのか……。

 その真意はどうだろう、と興味半分、からかい半分の気持ちでスマホを取り出して御三家のLIMEを開く。『桜坂が第六西で寝てる』と打つと、遼がすぐに『まだ寝てんの』と返してきた。続く返事によれば、どうやら一時間前から寝ていたらしい。本当によく寝る……。そもそも一時間前に遼が確認しているということは、少なくとも遼がパーカーを掛けたのは一時間以上前。『お前のパーカー抱きしめて寝てる』と報告した後、未だにその状態にある桜坂を一瞥した。

 不愉快だ。遼のパーカーを布団代わりにすることは許そう。他に何もないから仕方がない。だがそれを抱いてるとくれば話は別だ。そのパーカーを引っ張り、腕の中からするりと抜いた。ぽいっ、とソファの背に掛ける。桜坂は不満そうに身動ぎした。余計不愉快だ。


『だから剥いどいた』

『やめてやれよ風邪引くだろ!』


 風邪を引く、以外にも反対する理由はあるんじゃないのか? 目の前にいれば分かるのだが、どうにも文字だけというのは情報が少なくていけない。特に遼の場合、その顔があまりにも正直に物を言うから。

< 419 / 438 >

この作品をシェア

pagetop