第二幕、御三家の嘲笑
「桐椰くん、なんて?」
「こうは言ってるけどどうせ照れてるよ」
「だよねー」
ふふ、と桜坂は笑った。
「どうせ顔真っ赤なんでしょ、桐椰くん」
その頭ごと抱き寄せたい。
「伝えとくよ」
でもそんなことをするわけにもいかず。桜坂の言葉をそのままLIMEで伝えた。『素直に喜んどけよ優しい桐椰くん』と付け加えて、スマホをポケットに滑り込ませる。
「で、帰るの?」
「ん、帰ろうかな」
「送るよ」
「わーい! ありがとうございますリーダー!」
「はいはい。言っとくけど、俺の高さからだと中見えるからね。ボタン一つ閉めて」
彼女に続いて立ち上がれば、その視線の差は二〇センチ弱。緩んだシャツの中をわざわざ見なくても中が見える。その胸を指差せば、桜坂は少しだけ――ほんの少しだけ――頬を染めながら胸元を掴んだ。
「……あんまり何回も言わないでよ」
「だったらちゃんとボタン留めなよ」
「だって暑いんだもん……」
ピッ、とエアコンを切る。確かに外は暑い。早く終わってくれないかな、この季節……。廊下に出て窓の外を眺めればその暑さが映像として見えるようだった。つい数分前に体感したばかりのその暑さを折角忘れていたのに、また戻らないといけないのか。顔をしかめていると、背後から彼女が顔を出す。