第二幕、御三家の嘲笑
(三)保護者
暑い、暑い。そうぼやきながら第六西の扉を開けた。
「あー涼し……」
クーラーがかかってるってことは誰かいる、そう気が付いて辺りを見回せば……いた。ヤツが寝ていた。ソファで横になって、健やかな寝息を立てている。当然のことながら眼鏡を外しているのはよし、だがそれに加えてリボンを外して、シャツのボタンまで外して……。
「少しは警戒しろよコイツ……!」
なぜ、そんな恰好で寝てるのか。此処に来るヤツ漏れなく全員男だぞ分かってんのかコイツ! 鍵も締められるんだぞ此処は! つか寝るなら鍵締めろよ危ねぇな! 内心激しくやり場のない憤りに近い感情を爆発させるものの、ヤツが起きる気配はない。室内を確認もせずに扉を開けたせいでそれなりに物音はしたはずなのに、なぜ起きない。起きてくれよ頼むから。お前そうやって寝ると太腿見えてるから! 反射的にBCCで抱え上げたときの記憶が呼び起こされ、その感触を思い出してしまう。柔らかくて抱き心地が良かったとか――ヤメロマジでヤバいヤメロ俺。飛びそうになる理性に頭を抱えた。コイツを起さないと多分ヤバい。そう思って恐る恐る近寄るけれどぴくりとも動かない。
「……おい、起きろよ」
控えめに声をかけるけれど――いや、控えめにかけるせいか――やはり目覚めない。なんでこんなところで熟睡できるんだよ。頭おかしいだろ。能天気すぎるだろ。そんなに此処が落ち着くのかよ。何回でも言うけど此処に来るの全員男だからな!