第二幕、御三家の嘲笑
「桜坂が好きなのか?」
「は!?」
反省と自責の念で一杯になっていたところにとんでもない質問が投げかけられ、思わず素っ頓狂な叫び声を上げてしまった。駿哉は既に笑みを引っ込め、いつも通りの無表情だ。だから他意はない……、ただの純粋な疑問だとは思う、が、いかんせん内容が……。
「お、お前、何言って、」
「俺は訊ねただけだから肯か否か答えればいいだろう」
お前、自分が何訊いたか分かってんのか? それでイエスとノーを即答するヤツいると思ってんのか? お前読書家なんだから小難しい評論とか文学とかばっかり読んでないでもう少し大衆小説を、できれば恋愛小説でも読んで人の気持ちを学んでくれよ頼むから!
「いや、だから……、」
「肯否を答えたくないというのなら別に構わないが」
だからお前ってヤツは……! なんでコイツ気遣いできたり気を回したりができるのに恋愛方面になると疎いんだ。思わず額を押さえてしまう。総に見つかったよりマシだったと思った気がしたけれど、ある意味コイツはコイツで厄介だった……。
「初恋はどうした」
……だからお前はなんでそう……。
「……お前めちゃくちゃ食いつくな。興味ねぇこと訊くんじゃねぇよ」
「興味のないことを訊くほど俺は馬鹿ではないが?」
逃げようとしたのに、その目は逃げることを許さない。で、どうなんだ、と目だけで重ねてくる。質問をはぐらかす、なんてことがコイツや総相手にはできない。総はよくやってるのに。……もしかして俺だけ一人馬鹿なのか? よく総に笑われている理由が分かった気がした。