第二幕、御三家の嘲笑
「いや有り得ねぇだろ。目の前にいるのお前じゃねぇか」
「頼むから馬鹿な返事をしないでくれないか? 話すべきことが余計に増えるのは面倒だ」
お蔭で駿哉からゴミを見るような目を向けられた。ワンテンポ遅れて思考が追いつく。答えは決まっていない。だって、アイツに確かめるのは、怖いじゃないか。
「……別に……、」
覚えられていないのが怖いだけじゃない。アイツが俺に何の感情も持ってないことなんて分かってる。どうせなら総とのほうが話が合うことくらい分かってる。頭の回転が良い総と話すときに楽しそうなことくらい分かってる。……俺と総と、どっちに惹かれるかなんて分かりきってる。それなのに、初恋の相手かどうかを確かめて、違うと言われて、挙句の果てにただ関係を気まずくするだけになったらどうすればいい。そう考えれば、確かめることなんてできない。
「遼」
「なんだよ、口止め料かよ」
はぁ、と思わず溜息を吐いてしまった。俺とアイツの関係は、進展しないことくらい分かってる。
「くれるというなら貰っておくが、そうではない。総は反対するかもしれないが、俺は特に興味はないから好きにしろ」
「……あ?」
半ば自棄になっていたところによく分からない言葉をかけられて怪訝な顔をしてしまった。総は反対する? 何の話だ。だが駿哉は説明する気もないらしく、「じゃあ、また明日な」と口にするだけで、言い残したことなど欠片もないように踵を返した。
「……おう」
返事はするものの、意味は分からないままだ。首を捻りながら、取り敢えずアイツが起きるまで教室に帰っておこうかとその場を後にする。
その一時間後だ、総からLIMEが来たのは。起きたらアイツから連絡が来るだろうと思っていたのにいつまでも連絡はなく、漸く来たと思ったら総からだし、しかも未だ寝ているという。本当になんなんだアイツは。まだパーカー抱きしめてんのかなぁ、と思いながら返事をしていたら、パーカーは剥ぎ取っておいたと言われた。なんなんだよお前。しかも俺が何やっても起きなかったくせに、総が声を掛けたら起きたときた。なんなんだよ揃いも揃って!