第二幕、御三家の嘲笑
「……何で今そんなこと訊くんだよ」
「……確かめたくなった。昨日は分からずじまいだったから」
アイツと二人で祭りを楽しんでいる間に、仲が進展したのだろうか。そもそも、総は告白したと言ったけれど、アイツはなんて返事をしたのだろう。その返事を貰ったから、いま俺の感情を確かめようと思ったのだろうか。付き合うことになったよ、ごめんね、なんて言うのだろうか。
ドクンと、嫌な感情が渦巻く。あの時と同じだ。つい数時間前、総のスマホから連絡をしてきたアイツの声を聞いたときと同じ感情。はしまきを買いに行くと言って、それっきり総と消えたアイツ。いつまで経っても戻ってこない二人に、吉野は「総ちゃんと楽しんでるんじゃないの? 総ちゃんいるならいいでしょ別に」と言うだけだった。駿哉はあの二人がどうなろうが興味はないと分かってた。だから何も言わずにおいた。自分の感情さえ判然としていない人間なんかが口を出す話じゃない。
それなのに、総の電話番号が表示されたのに、聞こえてきたのがアイツの声だったとき、酷く醜い感情が渦巻いた。なんで総と一緒にいんの――総とはしまきを買いに行ってそのままいなくなったんだから、総と一緒にいるのは当たり前で、寧ろ一緒にいないと心配になるんだから、疑問を抱くなんて変な話だった。なんで総のスマホからお前が連絡してくんの――他人のスマホを使って連絡してくることなんて普通に考えられるし、寧ろそれこそがトラブルがあったんだと示していた。なんで俺が電話に出ただけでそんな嫌そうな反応すんの――連絡した相手と別の相手が電話口に出ればトラブルに巻き込まれてるのも相俟って驚くのなんて当然の反応だし、なんなら吉野を選択したのは俺への気遣いの表れだった。
そんなことが、あの時、全部分からなかった。なんで総と一緒にいんの、なんで総のスマホからお前が連絡してくんの、なんで俺が電話に出ただけでそんな嫌そうな反応すんの――なんでなんで、なんてことばかり感じていた。そのときに抱いていた感情は疑問なんかじゃなくて憤りにも近い……、嫉妬だった。だからまともに取り合わなかった。迎え来てって何言ってんだ、総が一緒にいるんだから少々道に迷ったって帰って来れるだろ。トラブルに巻き込まれたって、総がいればなんとかなるだろ、そういうときに総は頼りになるから。お願い、なんて、総と一緒にいるときに俺に向けて言うんじゃねーよ、振り回したいのかよ、俺を。そんなことしか考えられなかった。