第二幕、御三家の嘲笑
 実際、次の日にわざわざ釘を刺しに来た。朝、校門前で、コイツのためなら遅刻も厭わないのか、俺を待っていた。俺を見つけた瞬間、道を塞ぐように前に立って。

『退けよ、邪魔だ』

『あのさあ、アンタ、亜季の何なの?』

『別に何でもねーよ』

『あ、そう? じゃあこの忠告は念のためだけどさあ』

 不気味に口角を吊り上げて、身長差で脅すように、ちらとも笑わない瞳で俺を見下ろして。

『亜季に手出したら、マジで殺すから』

『は、何言ってんだ。別に興味ねーよ、アイツのことなんか』

『だから言ってるだろ、念のためだって。分かってるなら煩く言ったりしないさ』

『馬鹿馬鹿しい。とっとと学校行けよ』

『一つ、教えといてやるけどさ』

 その隣を通り過ぎれば、菊池雅は嗤った。馬鹿にしたように。

『亜季のことを何も知らないくせに、知ったような顔で慣れ慣れしくすんなよ。亜季がお前なんかに心開くことなんて、一生ねーから』

 無性に、イライラするんだ。俺はお前を知らないのに、菊池雅はお前を知っていて、お前が俺に心を開かないことを分かってる。

 こんなに近づいてみても、お前が俺に近づくことなんてない。


「……総と同じ匂いがする」


 よりによって、総に好かれるなんて。ついてない。
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