第二幕、御三家の嘲笑
「その例えによれば俺達の勝利で間違いないわけだが、そう上手くいくか……。ああ、俺は見学を決め込む予定だが」

「出ろよ。俺達だけに面倒事を押し付けるな」


 月影くん、御三家の中で一人だけ武闘派じゃなくて頭脳派だもんね。月影くんが汗を流す様子なんて想像できない。我関せずを決め込んで、涼しい顔で日陰で読書でもしていそうだ。


「それにしても、示しがつかないなんて、随分傲慢なことを言うね、生徒会も。自分達が偉いって前提が間違ってるって気付かないのかな」

「あながち間違いではないだろう。ヒエラルキーとしては一番上だ」

「ヒエラルキーの下位は上位手を出せないって意味でだろ? ヤツ等が決め込んだピラミッドの背景に偉大さなんて微塵もない」


 これだから馬鹿共は、と呆れた溜息を吐く。ぐうの音も出ぬ正論だ。


「お前の言っていることは正しい。だが、他の生徒がその正しさを持っていないことは覚えておけ。花高生は生徒会を権威の具象と捉えている者が大半なのだから」

「……その通りだね。覚えとくよ」


 おや、松隆くんが他人(ひと)の言葉に頷かされるなんて珍しい。そう感じると、ふと疑問が湧く。


「ねぇ、松隆くんと月影くんって、二人だけ桐椰くんよりも付き合い長かったりするの?」

「ん? ああ、そうだよ。俺と駿哉は本当に生まれたときから一緒にいるようなもんだから」


 松隆くんが自分と月影くんを交互に指さして示す。


「ほら、俺の父親は駿哉のお父さんにお世話になってるから。母親同士が仲良くなって、駿哉はほとんど生まれたときからうちに連れて来られてたってわけ」

「遼は俺と小学一年生のクラスが同じだった。透冶は三年のとき同じクラスになったんだ」

「あ、桐椰くんも小学校からなんだね」

「目立つヤツだったよー、小学生のときから。いつも誰かと一緒にいるんだから」

「目立つ点についてはアイツもお前には言われたくないだろう」


 へぇ……。あの桐椰くんが、友達に囲まれて……。いまは一匹狼上等金髪ヤンキーなのに。


「駿哉も目立ってじゃん、そこそこ。コイツ、昔からこんな感じだから」

「どんな感じだ」


 ふん、と興味なさげに眼鏡を押し上げる月影くんは、きっと自分が変人の類だと自覚していないのだ。


「でも桐椰くんと最初に仲良くなったの、ツッキーだったんだね」

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