第二幕、御三家の嘲笑

(二)君が暴いた軌跡

「ねぇ聞いて! さっき松隆くんにタオル渡したらありがとうって言われちゃった!」

「ちょっとそれ抜け駆けじゃん! 一試合目終わったときにアタシが渡そうとしてたのにぃ!」

「なんか今日の御三家機嫌良くない? 遼くんもポッキー食べてくれたよ?」

「いっつも無視なのに?」

「桐椰くんのあれ、正直反則だったよね……冗談であーんってやったらそのまま食べてくれたんだよ……」

「は!?」

「可愛すぎて未海(みみ)が発狂した話する?」

「もうクラスマッチなんて早々に負けて御三家見たいよね」

「ほんとそれ! 御三家全員同じ競技出てくれればいいのに」


 球技大会当日、女子更衣室は悲鳴交じりの御三家話で盛り上がっていた。原因は御三家の女タラシ度本領発揮にある。松隆くんが笑顔で女子から物を受け取り、桐椰くんが無愛想ながらも (無自覚に)可愛い仕草でお菓子を食べ、月影くんが女子の歓声をガン無視。あ、月影くんは通常運転だ。


「最近、御三家ちょっと雰囲気変わったよね」

「分かる分かる。近づきやすくなったっていうか、雲の上ではあるんだけど手が届きそうっていうか」

「それ矛盾してるじゃん。でも分かるんだよねー、最近の御三家、やさしーんだよ!」


 御三家がそんな行動に出てるのは機嫌が良いからじゃない。寧ろ桐椰くんの機嫌はすごぶる悪かった。松隆くんがイヤーなリーダー命令を下したせいだ。

『生徒会VS御三家と銘打つなら、その気でやらせてもらおうか。女子票は確実に貰え』

 元々、私が舞浜さん達にプールで足を引っ張られた事件 (私は第二次舞浜さん事件と呼んでいる)以来、御三家はみんなに平等に接しますを掲げることにすると松隆くんは言っていた。その宣言通り、松隆くんは積極的に女子に優しくするし、桐椰くんは生徒会によるイジメ現場を積極的に押さえるし、月影くんは女子の事務連絡を受けるようになった。……やっぱり月影くんだけ通常運転だ。その成果が発揮され、女子は「望みがあるかも!」と次々と松隆くんと桐椰くんに告白して丁重なお断りと共に玉砕し、男子は球技大会はぜひ我がチームにと(こぞ)って御三家を誘った。因みに全て一般生徒のお話だ。今や御三家は庶民の味方。強くを挫き弱きを助く、さながら義賊。一方生徒会メンバーの男子と女子の一部は今まで以上に御三家を敵視し始めた。ただし生徒会メンバーでも一部の女子は御三家派だと公言している。なまじ自分達に危険が及ばないからといい気なものだ。
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