獣紋の聖女
ゼンメルさまの用意してくださった高級宿屋で一泊する。その後、無事にネイジアのサロンへ帰ると、元獣人の皆さんからは歓迎をうけた。
「ごめんなさい。帰るのが遅くなってしまって」
薄紅色のウィッグをつけるのが、久しぶりなような気がする。頭を下げつつ、皆さんがそろったところで私は本当の名をあかすことにした。
と、いうのは、お兄さまの提案で――。
「ゼンメルさまに知られちゃったからな。これ以上、名を偽るのはやめたほうがいい」
……とのことだ。もっともな理由に私も同意し、獣サロンの皆さんには、これまでの事情をかいつまんで話す。
すると、多くの皆さんは同情してくれ、なおかつ、秘密も守ってくれると約束をしてくれたのだった。
「皆さん、ありがとうございます。今後も治療もがんばりますね」
笑顔で伝えると、今度は妙な間があった。
「あー。それなんだけどね、レディ。俺たちさぁ、実はレディがいない間に反省したんだよ。今回、レディが危ない目に合ったのもさぁ、俺たちがいる手前、断ることもできなかったんだろうなってさ」
シマリス獣だったレンレンさんが呟く。次に、狸獣だったモーレさんも苦笑いをしながら続けた。
「俺たちもさ、レディが優しくて、治療をがんばってくれるからって、ちょっと甘えていたなーってさ」
モーレさんは、人間になってもどこかタヌキに似ていて愛嬌があり、仕草も可愛い。
反省するようなことかな? と思いつつ耳を傾けると、次々に元獣人だった皆さんが賛同し始めた。
「……つまりさ。レディはもう大事な俺たちの聖女なんだからさ。体をいたわってくれってことさ」
最後に、ペンギン獣だったジャルさんが、ぽんぽんと背中をたたく。直後、「貴様! レディに触ったな!」と数人の男性にたしなめられ、朗らかに笑う。
そういえば、お兄さまが言ってたのだけど。
私が獣サロンで治療をすることに関しては、問題がなくなったらしい。
昨日の夜、お兄さまはゼンメルさまに呼び出され、いろいろと私の事情を伝えたという。その結果、どういうわけか神殿への報告もしなくてもいいし、ネイジアサロンでの奉仕活動も許されたらしいのだ。
なぜ? と疑問に思う。いくらゼンメルさまの身分が高くても、王室と神殿は別だ。別組織に介入できるものとも思えない。――と、そのままお兄さまに伝えたところ。
「コルル……なぜとか言ってくれるな。俺の胃腸が壊れる」
相当なストレスがかかっているようだったので、口をつぐむことにした。
それ以来、兄の様子は一貫しておかしくなった。そわそわしながら私を見るし、用事があるのかと思って聞けば、「ナンデモナイヨ」と棒読みで答えるだけ。
一度だけ、「お前、ゼンメルさまとどこで知り合った」と聞いてきたことがあったので、家を抜け出した時に偶然、湖畔の小屋で『意識的な旅立ち』の場面に出会ってしまったことを話した。
結果、兄は崩れ落ちた。
なにやら「国家最重要機密うう……」と言いつつ、床を転げまわっていたのだけど、そこまでのことなのだろうか。
『意識的な旅立ち』は、国民の多くが知るところだ。
高位貴族が、「人のまま」であの世へ行くために、黒鉛の鎖で己を縛って火の精霊に焼き尽くしてもらう――それは古くから国に伝わってきた慣習でもある。
哀しいことだけど、理性を失った獣は大地を荒らしてしまう。そして多くの人の命を奪ってしまう。
王族に近い血を持つ者ほど、強力な獣になるので、ヒトに戻れなくなった獣は自ら命を絶つのが責務とされている。
平民の人でもたまに獣化して暴れまわる事件が起きるけれど、貴族に比べたら被害はさほど大きくならない。もし、その人たちが本当にどうしようもなくなれば、いくつかの段階を踏んだあとに討たれ、獣人墓地に埋葬されるという。
どちらも、哀しくて理不尽な死にはかわりない。
誰もが自ら望んで獣になりたかったわけではないと思う。人でいたかったと思いながらも理性を失くしていく命に――私たちは未だ、祈ること以外の方法を知らない。
「……レディ、お疲れですか? 今日はこの辺までにいたしましょう」
はっとした。日中、ぼうっとしながら治療を繰り返していたら、いつのまにか時間が過ぎていたらしい。
窓の外はうっすらと紅い空に変わりつつある。いつもなら日が暮れるまで祈りは続けていたのだけど、復帰した直後だから今日は早めに切り上げようと、皆さんが言ってくれたのだ。
「では俺たちは交替でサロンの見張りにつきますので、レディは安心してお眠りください」
「ありがとう」
答えるものの、本当にすぐに眠るわけではない。このあとは夕食を作り、お兄さまやコスタさんと一緒に食べて、身を綺麗にする作業がある。
ベッドにいくまでのほんのわずかな時間は、私にとっての明日の活力源だ。なので、なるべくゆっくりしたいなと思うのだけど――最近は、ほとんど気絶に近い状態で睡眠に入っていたことを思い出した。
「……急がないと」
カーテンを引こうとすると、窓枠の外に見知らぬ猫さんがいることに気がつく。
ちょっと珍しい紫色の猫だ。思わず二度見してしまう。
傍に寄って窓を開けてみると、まるで挨拶をしているみたいに頭を下げるのでこちらも会釈を返した。
「獣人の患者さんですか?」
反応はない。ただじっと、私を見つめるだけだ。ということは、本物の猫さんなのだろう。にわかに心が浮き立ち、指で呼んでみる。
すると猫さんはゆっくりと来てくれた。窓枠に乗った猫さんの喉をふりふりと撫でる。
柔らかい。それにすごく優しい目で私を見てくれる。
「お腹空いてる? いま何か持って……」
そこで、猫さんに口元をぺろりと舐められた。
ドキッとする。だって猫さんからのキスなんて、初めてだったから。
そういえば最近、お兄さまの猫獣姿を見ていない。深刻な猫不足だったことに気づいて、そのまま抱こうとすると猫さんはあっけなくすり抜けてしまった。
「あ。帰るのね……またね」
名残惜しい気持ちを抑えつつ、笑顔で手を振る。
猫さんは一度振り返り、またもや人間のようにぺこりと頭を下げたのだった。
(……かわいいけど、おかしな猫さん)
すっかり気分が良くなった。
カーテンを閉め、明かりを消して休憩室へ移動する。すると私より一足先に、夕飯の準備をしていてくれたお兄さまとコスタさんが、そろって迎えてくれた。
「あ、アルイーネ……じゃなくてコルオーネ嬢。贈り物が届いてましたよー。送り主まではわからないですが」
エプロンを付けたコスタさんがジャガイモの皮をむきながら笑顔で言う。テーブルの上にはリボンがかけられた大箱。つつましいサロンの中で、ひときわ目立って輝いている。
その脇では、お兄さまが黙々とキャベツを千切りしている。箱の話題が出たとたん、こちらから視線をはずし背を向けた。
「お兄さま、これ?」
「お、俺は知らない。良かったな、コルル。お前に感謝したいってさ」
箱には小さなカードが添えられている。整った文字で、こんなメッセージも書かれていた。
『あなたのおかげで人間に戻れました。こちらはお礼です。どうか獣紋夜会でお召しください』
「……あら」と声に出してしまう。カードと一緒に獣紋夜会への招待状らしきものもある。
箱の中身がドレスなら、たしかに心配事の一つは消えるけど……いくらお礼でもこんな高価なものをいただいていいのだろうか。
「あっちにしてみりゃ、命を救われたんだから安い買い物だろ。もらっときな。っていうか、そうしてくれ、俺の胃腸のためにも」
なぜお兄さまの胃腸が関係あるのだろう。疑問だったけど、お兄さまがそう言うのならと、受け取ることにした。
夜会ではアイマスクもつけるし、これにウィッグを付けていけば変装としても完璧に近い。
これなら万が一、トレミーが探しにきたとしても、バレずにやり過ごせるはずだ。
「でも、どなたから? お兄さまはご存知なの?」
「よーし、俺特製のキャベツの千切りができたぞ! さぁ、喰え。野菜は身体にいいんだ!」
「……お兄さま、なぜ泣いてるの?」
「そうそう、夜会の日は馬車でお前を迎えに来てくれるってさ」
「え、私に? そこまで?」
たしかに――王都まで一人で行くのは難だけど、そこまで配慮してくださるって一体……。
「あとな。俺さ、明日から騎士として、ゼンメルさまの指揮下に入るんだと」
「まぁ、おめでとうございま、す……?」
話の飛びように面食らう。けれど、お兄さまは私を見ずに、早口言葉のように先を続けた。
「一応、昇格らしいけどな。代わりに明日からはお前の傍にいてやれない。獣紋夜会もパスだから、ひとりでがんばれよ。俺はネイジア一帯に起きてる異常の調査をするらしい」
「異常?」
初耳だ。たしかにネイジアは人に戻れなくなった人たちだけが住む場所だから未知と言えば未知なんだけど、どのへんが異常とまでになったのか。それも質問すると、お兄さまは真顔になった。
「ゴットハルト団長もさ……探し始めてわりと経ってるよな。もういいかげん、会いそうなのに変だと思わないか?」
「それは――獣人として、森のどこかで生きているのでは?」
「これだけ騎士が動員されてるんだ。だったら捕獲されているか獣人墓地に来ているだろうよ。そういった行方不明者が多くなってる。……お前も気を付けろよ。まぁ、お前につく護衛は俺なんかよりもよほどエリートな騎士たちばかりだから、大丈夫だとは思うけど」
お祝いなんかとても言えそうにない、複雑な表情のお兄さまだった。
「ごめんなさい。帰るのが遅くなってしまって」
薄紅色のウィッグをつけるのが、久しぶりなような気がする。頭を下げつつ、皆さんがそろったところで私は本当の名をあかすことにした。
と、いうのは、お兄さまの提案で――。
「ゼンメルさまに知られちゃったからな。これ以上、名を偽るのはやめたほうがいい」
……とのことだ。もっともな理由に私も同意し、獣サロンの皆さんには、これまでの事情をかいつまんで話す。
すると、多くの皆さんは同情してくれ、なおかつ、秘密も守ってくれると約束をしてくれたのだった。
「皆さん、ありがとうございます。今後も治療もがんばりますね」
笑顔で伝えると、今度は妙な間があった。
「あー。それなんだけどね、レディ。俺たちさぁ、実はレディがいない間に反省したんだよ。今回、レディが危ない目に合ったのもさぁ、俺たちがいる手前、断ることもできなかったんだろうなってさ」
シマリス獣だったレンレンさんが呟く。次に、狸獣だったモーレさんも苦笑いをしながら続けた。
「俺たちもさ、レディが優しくて、治療をがんばってくれるからって、ちょっと甘えていたなーってさ」
モーレさんは、人間になってもどこかタヌキに似ていて愛嬌があり、仕草も可愛い。
反省するようなことかな? と思いつつ耳を傾けると、次々に元獣人だった皆さんが賛同し始めた。
「……つまりさ。レディはもう大事な俺たちの聖女なんだからさ。体をいたわってくれってことさ」
最後に、ペンギン獣だったジャルさんが、ぽんぽんと背中をたたく。直後、「貴様! レディに触ったな!」と数人の男性にたしなめられ、朗らかに笑う。
そういえば、お兄さまが言ってたのだけど。
私が獣サロンで治療をすることに関しては、問題がなくなったらしい。
昨日の夜、お兄さまはゼンメルさまに呼び出され、いろいろと私の事情を伝えたという。その結果、どういうわけか神殿への報告もしなくてもいいし、ネイジアサロンでの奉仕活動も許されたらしいのだ。
なぜ? と疑問に思う。いくらゼンメルさまの身分が高くても、王室と神殿は別だ。別組織に介入できるものとも思えない。――と、そのままお兄さまに伝えたところ。
「コルル……なぜとか言ってくれるな。俺の胃腸が壊れる」
相当なストレスがかかっているようだったので、口をつぐむことにした。
それ以来、兄の様子は一貫しておかしくなった。そわそわしながら私を見るし、用事があるのかと思って聞けば、「ナンデモナイヨ」と棒読みで答えるだけ。
一度だけ、「お前、ゼンメルさまとどこで知り合った」と聞いてきたことがあったので、家を抜け出した時に偶然、湖畔の小屋で『意識的な旅立ち』の場面に出会ってしまったことを話した。
結果、兄は崩れ落ちた。
なにやら「国家最重要機密うう……」と言いつつ、床を転げまわっていたのだけど、そこまでのことなのだろうか。
『意識的な旅立ち』は、国民の多くが知るところだ。
高位貴族が、「人のまま」であの世へ行くために、黒鉛の鎖で己を縛って火の精霊に焼き尽くしてもらう――それは古くから国に伝わってきた慣習でもある。
哀しいことだけど、理性を失った獣は大地を荒らしてしまう。そして多くの人の命を奪ってしまう。
王族に近い血を持つ者ほど、強力な獣になるので、ヒトに戻れなくなった獣は自ら命を絶つのが責務とされている。
平民の人でもたまに獣化して暴れまわる事件が起きるけれど、貴族に比べたら被害はさほど大きくならない。もし、その人たちが本当にどうしようもなくなれば、いくつかの段階を踏んだあとに討たれ、獣人墓地に埋葬されるという。
どちらも、哀しくて理不尽な死にはかわりない。
誰もが自ら望んで獣になりたかったわけではないと思う。人でいたかったと思いながらも理性を失くしていく命に――私たちは未だ、祈ること以外の方法を知らない。
「……レディ、お疲れですか? 今日はこの辺までにいたしましょう」
はっとした。日中、ぼうっとしながら治療を繰り返していたら、いつのまにか時間が過ぎていたらしい。
窓の外はうっすらと紅い空に変わりつつある。いつもなら日が暮れるまで祈りは続けていたのだけど、復帰した直後だから今日は早めに切り上げようと、皆さんが言ってくれたのだ。
「では俺たちは交替でサロンの見張りにつきますので、レディは安心してお眠りください」
「ありがとう」
答えるものの、本当にすぐに眠るわけではない。このあとは夕食を作り、お兄さまやコスタさんと一緒に食べて、身を綺麗にする作業がある。
ベッドにいくまでのほんのわずかな時間は、私にとっての明日の活力源だ。なので、なるべくゆっくりしたいなと思うのだけど――最近は、ほとんど気絶に近い状態で睡眠に入っていたことを思い出した。
「……急がないと」
カーテンを引こうとすると、窓枠の外に見知らぬ猫さんがいることに気がつく。
ちょっと珍しい紫色の猫だ。思わず二度見してしまう。
傍に寄って窓を開けてみると、まるで挨拶をしているみたいに頭を下げるのでこちらも会釈を返した。
「獣人の患者さんですか?」
反応はない。ただじっと、私を見つめるだけだ。ということは、本物の猫さんなのだろう。にわかに心が浮き立ち、指で呼んでみる。
すると猫さんはゆっくりと来てくれた。窓枠に乗った猫さんの喉をふりふりと撫でる。
柔らかい。それにすごく優しい目で私を見てくれる。
「お腹空いてる? いま何か持って……」
そこで、猫さんに口元をぺろりと舐められた。
ドキッとする。だって猫さんからのキスなんて、初めてだったから。
そういえば最近、お兄さまの猫獣姿を見ていない。深刻な猫不足だったことに気づいて、そのまま抱こうとすると猫さんはあっけなくすり抜けてしまった。
「あ。帰るのね……またね」
名残惜しい気持ちを抑えつつ、笑顔で手を振る。
猫さんは一度振り返り、またもや人間のようにぺこりと頭を下げたのだった。
(……かわいいけど、おかしな猫さん)
すっかり気分が良くなった。
カーテンを閉め、明かりを消して休憩室へ移動する。すると私より一足先に、夕飯の準備をしていてくれたお兄さまとコスタさんが、そろって迎えてくれた。
「あ、アルイーネ……じゃなくてコルオーネ嬢。贈り物が届いてましたよー。送り主まではわからないですが」
エプロンを付けたコスタさんがジャガイモの皮をむきながら笑顔で言う。テーブルの上にはリボンがかけられた大箱。つつましいサロンの中で、ひときわ目立って輝いている。
その脇では、お兄さまが黙々とキャベツを千切りしている。箱の話題が出たとたん、こちらから視線をはずし背を向けた。
「お兄さま、これ?」
「お、俺は知らない。良かったな、コルル。お前に感謝したいってさ」
箱には小さなカードが添えられている。整った文字で、こんなメッセージも書かれていた。
『あなたのおかげで人間に戻れました。こちらはお礼です。どうか獣紋夜会でお召しください』
「……あら」と声に出してしまう。カードと一緒に獣紋夜会への招待状らしきものもある。
箱の中身がドレスなら、たしかに心配事の一つは消えるけど……いくらお礼でもこんな高価なものをいただいていいのだろうか。
「あっちにしてみりゃ、命を救われたんだから安い買い物だろ。もらっときな。っていうか、そうしてくれ、俺の胃腸のためにも」
なぜお兄さまの胃腸が関係あるのだろう。疑問だったけど、お兄さまがそう言うのならと、受け取ることにした。
夜会ではアイマスクもつけるし、これにウィッグを付けていけば変装としても完璧に近い。
これなら万が一、トレミーが探しにきたとしても、バレずにやり過ごせるはずだ。
「でも、どなたから? お兄さまはご存知なの?」
「よーし、俺特製のキャベツの千切りができたぞ! さぁ、喰え。野菜は身体にいいんだ!」
「……お兄さま、なぜ泣いてるの?」
「そうそう、夜会の日は馬車でお前を迎えに来てくれるってさ」
「え、私に? そこまで?」
たしかに――王都まで一人で行くのは難だけど、そこまで配慮してくださるって一体……。
「あとな。俺さ、明日から騎士として、ゼンメルさまの指揮下に入るんだと」
「まぁ、おめでとうございま、す……?」
話の飛びように面食らう。けれど、お兄さまは私を見ずに、早口言葉のように先を続けた。
「一応、昇格らしいけどな。代わりに明日からはお前の傍にいてやれない。獣紋夜会もパスだから、ひとりでがんばれよ。俺はネイジア一帯に起きてる異常の調査をするらしい」
「異常?」
初耳だ。たしかにネイジアは人に戻れなくなった人たちだけが住む場所だから未知と言えば未知なんだけど、どのへんが異常とまでになったのか。それも質問すると、お兄さまは真顔になった。
「ゴットハルト団長もさ……探し始めてわりと経ってるよな。もういいかげん、会いそうなのに変だと思わないか?」
「それは――獣人として、森のどこかで生きているのでは?」
「これだけ騎士が動員されてるんだ。だったら捕獲されているか獣人墓地に来ているだろうよ。そういった行方不明者が多くなってる。……お前も気を付けろよ。まぁ、お前につく護衛は俺なんかよりもよほどエリートな騎士たちばかりだから、大丈夫だとは思うけど」
お祝いなんかとても言えそうにない、複雑な表情のお兄さまだった。