画面越しじゃ、満たされない

「『勘違いじゃない』って言いたいよ」



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『はい、もしもし』


『もしもし!
久しぶりやなぁ、ハルちゃん』


『そうですか?
1週間ぶりくらいでは?』


『1週間も声聞いてなかったら、十分"久しぶり"やろ』


『まぁ……私は配信で毎日聞いてるから……』


『あぁ……そうよな…………複雑やわぁ』


『やっぱり、練習忙しいんですよね?
いよいよ来月ですもんね、交流大会』


『そー。連日、配信終わったら即練習で……大体深夜までやるからさ。
ようやく今日、電話できる時間取れてん』


『いやいや……
そんな無理してかけて来なくていいので。
休める時に休んでください』


『俺がしたいの。
ほんとは会いに行きたいくらいやのにさぁ』


『………………ナギくん。
少し前から、言おうと思ってたんですけど』


『ん?』


『そーいうの…………やめてくれませんか?
……勘違いしそうになるんで』


『えっ!?
なになに、"勘違い"って!
どーいうこと?!詳しく!!!』


『え、勢いコワ。
……いいです。やっぱり、なんでもないです』


『なんでよ!!!』


『いや……これ言ったら、なんか……
自意識過剰みたいになっちゃうし』


『大丈夫。絶対そんなことないから。
…………言うてみて?』


『ぐっ………………その声、ズルい』


『はーるちゃん。ねぇ、おねがい』


『う…………。
………………バカにしないでくださいね。
自分が痛いことなんて、十分わかってますから』


『しない。絶対にしない』


『……ほんとに、ちゃんとわかってるんです。
こーやって電話するのは……応援の声を直接聞きたいからだって。
私に会うのも……最初は興味本位で……今はリフレッシュだとか、単なるファンサなんだって。
わかってるんですけど…………』


『………………』


『……でも。
それでもやっぱり、"電話したい"とか"会いたい"とか、何回も言われると……
それに先月も、一緒に旅行したりして………
それって…………なんか……』


『…………なんか?』


『な、なんか………………』


『………………』


『こ…………恋人扱いされてるみたいで……
私のこと…………す、すす、す……好きなのかな、って…………』


『…………………………』


『あぁあ……ほらもう!
だから言ったじゃないですか!圧倒的自意識過剰なんだって!
やっぱり言うんじゃなかった……こんな、まるで自分が特別だと思ってるようなこと……うぅ……恥ずかしい…………』


『俺まだ何も言うてないやん』


『だって。無言の間が語ってましたもん。
"何言ってんだコイツ"みたいな!!』


『そんなんとちゃうよ。噛み締めてたの』


『……噛み締める?』


『そう。だって、もう3年やで。
"あー、ようやくここまで来たかぁ"って感じ』


『はい?私の勘違いレベルが?』


『いや、どこまでマイナス思考なん』


『……ナギくんが、よくわからないせいですよ』


『ちなみにさぁ……
そーいうの言われるの、嫌ってこと?』


『嫌……というより、ただただ混乱するんです。
頭ではわかってても……感情が振り回されちゃうんで、やめてほしいです』


『……あかんよ、ハルちゃん。
そんなんじゃ、益々やめられへんやん』


『ぐ……鬼畜。悪魔。悪逆非道』


『え、そこまで言う?
まあでも……確かに最近の俺、度が過ぎてた気はする。
やっぱ自分との約束は守らなな』


『……約束?
なんかもう、わからないことばっかりですけど。
理解してくれたならそれで……』


『そやね。控えるよ。
"世界大会終わるまで"は』


『……違う。"今後ずっと"って言ってください』


『あ、そうや。
次電話できるの、交流大会終わった後かも』


『や、それはいいんですけど……普通に無視しないでください』


『よし。じゃあ、練習行ってくるなぁ』


『ちょっと!!
ずっとって言ってください!!!』


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