画面越しじゃ、満たされない

「『会いに来て』って言ってよ」



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『……えっ?もしもし、ナギくん……!?』


『めっちゃ驚いてるやん』


『そ……そりゃそうですよ!
だって、まさか向こうへ滞在中に……しかもこのタイミングで電話くると思わなかったですもん!
え、今なにしてるんですか?』


『ちょっと空き時間できたからさ。
さっきまでは、みんなで今日の試合の振り返りしてたんやけど。練習始める前に、一旦休憩しよってなってん』


『なるほど……って、そうだ……!し、試合!!
"おめで"……いや、
"ついに明日"……より前に、
"すご"……じゃなくて……
"お疲れさま"……でもなくて……!』


『ちょ。ハルちゃん落ち着いて。
何言うてるか全然わからへん』


『だって!突然の電話だったから、言うこと準備できてなかったんですよ!
伝えたいことはいっぱいあるのに……パニックです』


『いいよ、まとまってなくても。
深呼吸して、ゆっくり教えて?』


『は、はい………………。
えっと……まず……まずは、
今日までのトーナメント戦、お疲れ様です』


『ありがとう』


『それで……とにかくみんな強くて……すごくて……。
私、感動して毎試合泣いちゃって……って、
それはどうでもいいんですけど……』


『はは。気ぃつけな目腫れてまうで』


『そして……ついに………明日………………』


『うん。いよいよ明日……決勝やなぁ』


『はい……。
にしても、ここまでのトーナメント……
あまりにも危なげなく進むから、本当にびっくりしました。
みんな、すごく落ち着いてるし……』


『そー見える?
それだけ練習してきたからかな』


『特にナギくん……ちょっと変わりましたよね』


『え、そう?』


『なんだろ……プレーに貫禄が出た?というか……
大人になった……?みたいな』


『え、そんなんわかんの?すごいなハルちゃん。
んー。なんやろ。
みんなのことは勿論……自分のことも信頼出来るようになってきたから、かな?』


『え、すご……そんなのもう……具現化した努力じゃないですか………。
大舞台の前でも怖気づかないメンタル維持といい……本当すごいです』


『成長したとこ見せれてて良かった。
……まあ、ずっと変わらんこともあるけど』


『?』


『………………あのさぁ、ハルちゃん。
あ、もう大丈夫?次、俺が話してもいい?』


『はい、もちろん』


『あー……その……
"控える"って言うたばっかりなんやけど…………』


『?』


『もし明日、俺らが優勝したらさ…………』


『え……はい』



『その時は…………
一番にハルちゃんに会いたいんやけど』



『え゛』


『……帰国した後、そっち行っていい?』


『……………………』


『…………ダメ?』


『えっと……………………死亡フラグ?』


『いやいや。
ネタバレしといてあげるけど、
こんなとこで死なへんよ。俺』


『いや、私が昇天間近なので。
消息を絶つかもしれません』


『ふーん?
俺が世界一になるとこ、見れんでええんや』


『………………イキル』


『じゃあ良いよな、会いに行っても』


『………………要検討』


『なるほど。つまり良いってこと?』


『どこをどう捉えたら、その"つまり"になるんですか』


『だって。嫌がってないやん』


『考えたいって言ってるんです!』


『まあ、どうせ逃げられへんって。
ハルちゃんチョロ……優しいから』


『え?
今、とんでもないこと言おうとしましたよね?』


『気のせいやろ。お土産買ってくなぁ。
ほな。優勝に向けて、最後の練習行ってくる』


『もーーーー!!!
行ってらっしゃい!!!』


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