【完結】朱雀の姫

2 その頃、王都では

side飛龍(フェイロン)

その頃、王都(サイ)では…

「キェェェェェぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!
あ、ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!」

奇声に似た叫び声がこだまして居た。

それは、占い師の占いをする時の声であった。

亀卜占い。
その頃の才華の国では最もメジャーな占い方ではあったが、占っている所を見ると、ちょっとしたあほうのようだ。
俺はそんな事を思いながら、亀卜占いを見つめた。

「出ましたぁぁぁ!!!」

「ほぉ?
何が出た?」

「これは、吉の兆しが見えましてございます。」

「えぇい!
それだけでは、何のことか分からぬわ!
きちんと説明せよ!」

俺は多少声を荒げてそう言った。

「はいぃぃぃ!
申し訳もございませぬぅぅ!

皇帝陛下に申し上げ奉ります!

今までと大きく異なるのは、吉の兆しが大きい点でございます!
つまりは、大吉!
これは、朱雀の姫が現れたことを指すと考えまする!」

占い師は言う。

「なに!?
朱雀の姫が!?

それは、誠か!?」

「はい!
まず、間違いございません!」

占い師は頭を下げてそう言った。

「して、その朱雀の姫は何処におる!?」

俺はさらに尋ねる。

「甲羅のひび割れによりますれば…
ここより、20キロほど離れた東の地と出ておりますが…」

占い師が亀の甲羅を指差しながら言った。

「20キロ東か…
それしか分からぬのか?」

「はいぃぃ!
申し訳もございませぬ!」

「よい、分かった。
そなたには褒美をつかわす!
下がれ!」

「ありがたき幸せ!」

そう言って占い師は下がっていった。

「さて、20キロ先の東の地、か…
あの占い師も役に立つのか立たぬのか…
20キロ先の東の地など、範囲が広すぎて限定出来んわ!」

俺は文句を言う。

そこで、宰相の春蕾(チュンレイ)が口を挟んだ。

「しかし…
朱雀の姫が本当に現れたとなると、これは国事でございますれば…
範囲が広いからと言って投げ出す訳にはいかぬでしょう?」

もっともな意見だ。

「ふぅむ…
まぁ、それはそうだが…

では、東の地の士大夫の娘辺りから調べてみるとするか。」

「御意にございます。
早速東の地に官吏を派遣して朱雀の姫を探させます。」

「あぁ、その手配はそなたに任せる。」

こうして、大掛かりな国を挙げての朱雀の姫探しが始まったのだった。

俺は誰も居なくなった皇帝の間で、ポツリと呟いた。

「朱雀の…姫…か…
果たしてどのようなおなごだろうか…?」

そして、そう呟いた時の俺の口元は僅かに綻んでいた。

これが全ての事の始まりとなるのだった。
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