熱情を秘めた心臓外科医は 引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
午後に控えているオペに集中するためにも、白衣を脱いで職務と切り離して彼女のことを真剣に考えたかった。
■3 突き動かされる気持ち、変化する二人の関係
紹介状の件を依頼したあと、数日後に心臓外科の窓口から連絡が入った。
「前に紹介したい病院を二つほどピックアップしたという先生からのお話でしたが、どちらがいいでしょうか」
ということだった。
どちらも通うのに距離は大差がないので、架純は勧められた方の病院を選んだ。
二週間後、予定通りに架純は再び十和田総合病院を訪れた。今日はその紹介状を受け取ったらそれで終わりだ。
ふと、架純は理人のことを思い浮かべる。
理人はこの時間にいるだろうか。個人的な連絡先は昔のものしか知らない。破談になった相手に連絡をとるのはタブーだと思っていたから、彼に会えるのは病院しかなかった。それも今日で終わりだ。
忙しい時間でなければ、顔を出して挨拶をしたかったけれど、かえってそれは迷惑かもしれない。
少し混雑している様子を見て、架純はバッグの中から洋書を取り出した。翻訳の仕事の参考にしようと思っていたものだが、単純に読み物としても気に入っている本だった。
隣に座った人がいて顔を上げると、思いがけない人物の姿に架純は息を呑んだ。
「せ、先生!?」
まさか理人がそこにいるとは思わなかった架純は目を白黒させた。
すると、しっと理人が自分の唇のあたりに人差し指をあてた。
「……今日は休みなんだ。それで、君が紹介状を取りにくるだろうと思ってね」
たしかに彼は白衣を着ていない。それだけではなく、いつもよりもラフな服装をしている。
休日なのにわざわざ来てくれたのだと思うと、えもいわれぬ感情がこみ上げてきてしまう。
(どうしよう……どんな態度をとればいいの?)
こんな想定外の場面に遭遇したら、この間みたいな態度を取り繕うことなんてできそうにない。
「ご挨拶もなしに、この間も失礼なことをしてしまってごめんなさい。先生は私にたくさん親切にしてくれたのに」
架純は迷った末に、素直にそう告げることにした。
「いや。俺もだいぶそっけない態度をとってしまった気がする。すまない。君からの申し出に、思いがけず……動揺していたんだ」
理人がきまりわるそうな表情を浮かべる。
■3 突き動かされる気持ち、変化する二人の関係
紹介状の件を依頼したあと、数日後に心臓外科の窓口から連絡が入った。
「前に紹介したい病院を二つほどピックアップしたという先生からのお話でしたが、どちらがいいでしょうか」
ということだった。
どちらも通うのに距離は大差がないので、架純は勧められた方の病院を選んだ。
二週間後、予定通りに架純は再び十和田総合病院を訪れた。今日はその紹介状を受け取ったらそれで終わりだ。
ふと、架純は理人のことを思い浮かべる。
理人はこの時間にいるだろうか。個人的な連絡先は昔のものしか知らない。破談になった相手に連絡をとるのはタブーだと思っていたから、彼に会えるのは病院しかなかった。それも今日で終わりだ。
忙しい時間でなければ、顔を出して挨拶をしたかったけれど、かえってそれは迷惑かもしれない。
少し混雑している様子を見て、架純はバッグの中から洋書を取り出した。翻訳の仕事の参考にしようと思っていたものだが、単純に読み物としても気に入っている本だった。
隣に座った人がいて顔を上げると、思いがけない人物の姿に架純は息を呑んだ。
「せ、先生!?」
まさか理人がそこにいるとは思わなかった架純は目を白黒させた。
すると、しっと理人が自分の唇のあたりに人差し指をあてた。
「……今日は休みなんだ。それで、君が紹介状を取りにくるだろうと思ってね」
たしかに彼は白衣を着ていない。それだけではなく、いつもよりもラフな服装をしている。
休日なのにわざわざ来てくれたのだと思うと、えもいわれぬ感情がこみ上げてきてしまう。
(どうしよう……どんな態度をとればいいの?)
こんな想定外の場面に遭遇したら、この間みたいな態度を取り繕うことなんてできそうにない。
「ご挨拶もなしに、この間も失礼なことをしてしまってごめんなさい。先生は私にたくさん親切にしてくれたのに」
架純は迷った末に、素直にそう告げることにした。
「いや。俺もだいぶそっけない態度をとってしまった気がする。すまない。君からの申し出に、思いがけず……動揺していたんだ」
理人がきまりわるそうな表情を浮かべる。