熱情を秘めた心臓外科医は 引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
十和田総合病院に行けば、理人がいるかもしれない。総合病院の診察は基本的に午前中のみ。午後は回診や会議そしてオペに回っていることだろう。
呼吸が少し乱れて速くなっていた。時々、息苦しさを覚えるものの、それの理由は架純には思い当たる節がある。理人のことがふらっと脳裏をよぎるたびに締め付けられるものだ。
――このときはそんなふうに思っていた。
『ハルの病棟はどこ?』
肝心なことを尋ねるのを忘れていた。架純は駅前で立ち止まってハルにメッセージを入れた。
『心臓外科だよ』
その言葉に驚き、架純の身体が無意識に跳ねた。
『部屋番号の写真送っておく』
メッセージが立て続けに画面を更新する。
架純は心臓のあたりが熱くなっていくのを感じながら早鐘を打つ鼓動に耳を傾ける。
心臓外科。しかも病棟の場所には覚えがある。架純も入院していたことがあるからだ。なんとなく親近感を抱き、近いものを感じていたけれど……記憶にはないだけでひょっとして知らないうちにハルとはこの病院の中ですれ違っていたことがあったのだろうか。
心臓外科にはあたりまえだが理人がいる。たとえ架純とハルの主治医が別だとしても、十和田総合病院のそれぞれの科にはチーム医療が存在する。理人もハルのことは患者として把握しているはずだ。
つまり、理人が回診に来ることがあったら顔を合わせることがあるかもしれない。
(どうしよう。鉢合わせたら……どんな顔をしたらいいか……)
夜にひと悶着があってあれっきりのままなのだ。理人に会う心の準備ができていない。とはいえ、ハルに会う約束を破るわけにはいかない。ただただ面会中に理人に遭遇することがないよう祈るしかなかった。
それから、ハルに頼まれたとおりに病院近くにあるハルのバイト先だという花屋の店主に挨拶し、事情を話して花束を作ってもらった。
春は過ぎ去ったばかりだから彼の好きらしい桜色の花は見当たらない。代わりに、桜に似た色のカーネーションにカスミソウを併せてもらった。
(気に入ってもらえるといいけれど……元気になりますように)
十和田総合病院についたあと、架純は病棟玄関の方からエレベーターに乗り込んだ。エレベーターの中には知らない患者と家族の姿がある。先に内科病棟の階で彼らは降りて行った。
呼吸が少し乱れて速くなっていた。時々、息苦しさを覚えるものの、それの理由は架純には思い当たる節がある。理人のことがふらっと脳裏をよぎるたびに締め付けられるものだ。
――このときはそんなふうに思っていた。
『ハルの病棟はどこ?』
肝心なことを尋ねるのを忘れていた。架純は駅前で立ち止まってハルにメッセージを入れた。
『心臓外科だよ』
その言葉に驚き、架純の身体が無意識に跳ねた。
『部屋番号の写真送っておく』
メッセージが立て続けに画面を更新する。
架純は心臓のあたりが熱くなっていくのを感じながら早鐘を打つ鼓動に耳を傾ける。
心臓外科。しかも病棟の場所には覚えがある。架純も入院していたことがあるからだ。なんとなく親近感を抱き、近いものを感じていたけれど……記憶にはないだけでひょっとして知らないうちにハルとはこの病院の中ですれ違っていたことがあったのだろうか。
心臓外科にはあたりまえだが理人がいる。たとえ架純とハルの主治医が別だとしても、十和田総合病院のそれぞれの科にはチーム医療が存在する。理人もハルのことは患者として把握しているはずだ。
つまり、理人が回診に来ることがあったら顔を合わせることがあるかもしれない。
(どうしよう。鉢合わせたら……どんな顔をしたらいいか……)
夜にひと悶着があってあれっきりのままなのだ。理人に会う心の準備ができていない。とはいえ、ハルに会う約束を破るわけにはいかない。ただただ面会中に理人に遭遇することがないよう祈るしかなかった。
それから、ハルに頼まれたとおりに病院近くにあるハルのバイト先だという花屋の店主に挨拶し、事情を話して花束を作ってもらった。
春は過ぎ去ったばかりだから彼の好きらしい桜色の花は見当たらない。代わりに、桜に似た色のカーネーションにカスミソウを併せてもらった。
(気に入ってもらえるといいけれど……元気になりますように)
十和田総合病院についたあと、架純は病棟玄関の方からエレベーターに乗り込んだ。エレベーターの中には知らない患者と家族の姿がある。先に内科病棟の階で彼らは降りて行った。