熱情を秘めた心臓外科医は 引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
自分から離れたのに。どうして死ぬかもしれないと思った瞬間に、彼のことが一番に浮かんでしまうのだろう。
あなたの顔が見たい。あなたの声が聴きたい。たとえその資格がないのだとしても、本当は、ずっと側に、いたかった――。
『大丈夫だ。俺がずっと側にいる。君のことを診ているから』
理人は心臓外科医となったあと、架純が抱えている難病の症例について独自にかつチームで研究しているらしかった。手術法についても医師公演会や医局会議そしてカンファレンスなどでも積極的に発表を行っていたという。
その話を耳にしたとき、もしも自惚れていいのなら、理人は架純を助けるために……そう思いたくなったこともあった。
でも、今この場で倒れたらもう理人に救ってもらうことはできないかもしれない。彼に会うことはもうできなくなるかもしれない。
架純は久方ぶりに死を予期した。
十年が一区切りだと言われていた。だからひょっとしたら奇跡が起きたのかもしれないと前向きに考えていた。そうでなくても自分では元気だと思っていたから根拠もなくしばらくは大丈夫だと思っていた。
でも、寿命は分け隔てなくいつかはやってくる。それは自分の考えもみない時に突然なのだ。
その時間は、こんなにも速くやってきてしまった。
これは理人と向き合うことから逃げようとしていた神様からの罰かもしれない。
苦しい胸を押さえて目を瞑り、そのまま白む意識の中、架純は泡になって消えることを覚悟した。
その時、白衣を着た人が駆けつけてくるのがぼんやりと視界に映り込む。
その場に声が響き渡った。
「架純……っ!」
揺らいで見えなくなっていく視界の中に、理人が駆けつけてくる姿があった。
「……っ」
理人に会いたい一心で最後に力を振り絞って身体を動かそうとしたが、その瞬間から血の気が引いて意識があっというまにもっていかれそうになる。
やっぱり苦しくて声が出せなかった。痛みで意識が遠ざかっていく。
もう二度と会えなくなるかもしれない。その怖さで無我夢中で彼の腕にしがみつく。しっかりと抱きとめられた感触だけわかった。
「大丈夫だ。君のことは俺が必ず助ける……だから、信じて待っていてくれ」
昨晩、迎えに行くと理人が言ってくれたことを思い出す。
そして、許嫁として出会った日からこれまで診てもらっていたこともどんどん浮かんできた。
あなたの顔が見たい。あなたの声が聴きたい。たとえその資格がないのだとしても、本当は、ずっと側に、いたかった――。
『大丈夫だ。俺がずっと側にいる。君のことを診ているから』
理人は心臓外科医となったあと、架純が抱えている難病の症例について独自にかつチームで研究しているらしかった。手術法についても医師公演会や医局会議そしてカンファレンスなどでも積極的に発表を行っていたという。
その話を耳にしたとき、もしも自惚れていいのなら、理人は架純を助けるために……そう思いたくなったこともあった。
でも、今この場で倒れたらもう理人に救ってもらうことはできないかもしれない。彼に会うことはもうできなくなるかもしれない。
架純は久方ぶりに死を予期した。
十年が一区切りだと言われていた。だからひょっとしたら奇跡が起きたのかもしれないと前向きに考えていた。そうでなくても自分では元気だと思っていたから根拠もなくしばらくは大丈夫だと思っていた。
でも、寿命は分け隔てなくいつかはやってくる。それは自分の考えもみない時に突然なのだ。
その時間は、こんなにも速くやってきてしまった。
これは理人と向き合うことから逃げようとしていた神様からの罰かもしれない。
苦しい胸を押さえて目を瞑り、そのまま白む意識の中、架純は泡になって消えることを覚悟した。
その時、白衣を着た人が駆けつけてくるのがぼんやりと視界に映り込む。
その場に声が響き渡った。
「架純……っ!」
揺らいで見えなくなっていく視界の中に、理人が駆けつけてくる姿があった。
「……っ」
理人に会いたい一心で最後に力を振り絞って身体を動かそうとしたが、その瞬間から血の気が引いて意識があっというまにもっていかれそうになる。
やっぱり苦しくて声が出せなかった。痛みで意識が遠ざかっていく。
もう二度と会えなくなるかもしれない。その怖さで無我夢中で彼の腕にしがみつく。しっかりと抱きとめられた感触だけわかった。
「大丈夫だ。君のことは俺が必ず助ける……だから、信じて待っていてくれ」
昨晩、迎えに行くと理人が言ってくれたことを思い出す。
そして、許嫁として出会った日からこれまで診てもらっていたこともどんどん浮かんできた。