熱情を秘めた心臓外科医は 引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
「左弁膜に異常を検知。逆流弁膜による手術痕による狭窄箇所あり。至急、関係箇所の血管をカテーテルで広げる手術を行う」
人の命を預かっている以上、けして慣れるものではないが、それでもやることは経験からわかっている。
しかし患者が架純だと思うと、どうしても雲の上を歩くような覚束なさを感じた。
大事な彼女を絶対に死なせるわけにはいかない、その強い想いと覚悟の分だけ手が震えるのだ。
「高辻、代わるか? このままで本当にいけるのか」
フォローに入った医師に喝を入れられ、ハッとする。手の震えはそれから治まった。
メスを握れなくなっては困る。それこそ彼女の命に関わるのだ。しっかりしろ、目を覚ませ。神経を研ぎ澄ませろ。これまでどうやって医師をしていた。
すっとすぐに理人は切り替える。
「大丈夫だ」
「いいんだな。信じるぞ」
「ああ、問題ない。必ず感謝を助ける。そのつもりでいつも通りに全力で臨む」
「よし」
君を迎えに行くからと伝えた。
必ず君を助けると約束した。
どうか信じて待っていてほしい。
その決意と意思は強く胸に灯したままで、ただ医師として患者を助けるべく、自分の腕と魂を捧げる。
「準備」
「はいっ」
『理人さんがいてくれたから、私は……今ここにいるんだと思います。でも、これからは安堵じゃなくて感謝をしたいなって。大事な人にお祝いしてもらうことに喜びたいなって』
オペの施術の途中、目に見えているのは拳サイズほどの臓器と脈動と血液だが、その間に、何度も、架純のやわらかな笑顔が脳裏をよぎった。
君にはもう残りの時間を考えるように、諦めることを覚えてほしくない。希望を描く日々を抱いてほしい。
君の願いを叶えたい。君がしたいと思うことを見守りたい。
(俺は……君のことが、好きなんだ)
君の誕生日は来年も再来年もその先もずっと祝いたい。俺の妻になって俺が君の夫になって、夫婦になって祝いたい。
君を失えない。だから俺は、心臓外科の道を選んだ。回り道をしても君を幸せにしたくて。それは最近までは元婚約者への想いにすぎなかったかもしれない。
だが、君が離れようとしたそのときに愚かにも俺は、遅れて彼女への想いに気付いた。
気付いたときには、ただ自覚がなかっただけで、もう引き返せないほど大きな感情が根付いていた。
人の命を預かっている以上、けして慣れるものではないが、それでもやることは経験からわかっている。
しかし患者が架純だと思うと、どうしても雲の上を歩くような覚束なさを感じた。
大事な彼女を絶対に死なせるわけにはいかない、その強い想いと覚悟の分だけ手が震えるのだ。
「高辻、代わるか? このままで本当にいけるのか」
フォローに入った医師に喝を入れられ、ハッとする。手の震えはそれから治まった。
メスを握れなくなっては困る。それこそ彼女の命に関わるのだ。しっかりしろ、目を覚ませ。神経を研ぎ澄ませろ。これまでどうやって医師をしていた。
すっとすぐに理人は切り替える。
「大丈夫だ」
「いいんだな。信じるぞ」
「ああ、問題ない。必ず感謝を助ける。そのつもりでいつも通りに全力で臨む」
「よし」
君を迎えに行くからと伝えた。
必ず君を助けると約束した。
どうか信じて待っていてほしい。
その決意と意思は強く胸に灯したままで、ただ医師として患者を助けるべく、自分の腕と魂を捧げる。
「準備」
「はいっ」
『理人さんがいてくれたから、私は……今ここにいるんだと思います。でも、これからは安堵じゃなくて感謝をしたいなって。大事な人にお祝いしてもらうことに喜びたいなって』
オペの施術の途中、目に見えているのは拳サイズほどの臓器と脈動と血液だが、その間に、何度も、架純のやわらかな笑顔が脳裏をよぎった。
君にはもう残りの時間を考えるように、諦めることを覚えてほしくない。希望を描く日々を抱いてほしい。
君の願いを叶えたい。君がしたいと思うことを見守りたい。
(俺は……君のことが、好きなんだ)
君の誕生日は来年も再来年もその先もずっと祝いたい。俺の妻になって俺が君の夫になって、夫婦になって祝いたい。
君を失えない。だから俺は、心臓外科の道を選んだ。回り道をしても君を幸せにしたくて。それは最近までは元婚約者への想いにすぎなかったかもしれない。
だが、君が離れようとしたそのときに愚かにも俺は、遅れて彼女への想いに気付いた。
気付いたときには、ただ自覚がなかっただけで、もう引き返せないほど大きな感情が根付いていた。