熱情を秘めた心臓外科医は 引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
本来は身内の手術を担当することを避けるのが通例なので、まだ議論は重ねられるようだが、それでも成功率は五割に満たないのだという。
「私は、先生の家族じゃないし、恋人でもないし、妻でもない……から」
だからきっと許可されると、架純は伝えようとしたのだが。理人が悲しそうな顔をするので口をつぐんだ。
「この手術が成功すれば、君はもっとずっと長く生きられるようになる」
理人が彼の魂と命をもって架純にその熱を伝えてくる。
架純は無意識に頷く。理人のことは誰よりも信じられた。
そうして握った手を、理人は自分の頬にもっていく。
「架純、俺は君を愛しているんだ」
「……っ」
幻聴ではない。はっきりと耳に触れて、目の前にいる理人が告げてくれている。
架純は彼の想いに応えたくて勢いに任せて声を出した。
「私、もっ」
衝動的に、だが、いつでも許されるなら伝えたかった言葉が飛び出そうとしていた。その、愛している、と発した言葉が擦れる。
でも、ちゃんと理人には届いたようだった。彼が目を細め、顔をくしゃくしゃにする。初めて見る、感情をありのままに出した彼の表情だった。
「回り道をしてごめん……」
理人がそう言い、握っていた手にまた力を込めた。
何度も、何度も、架純の命を繋ぎ留めるように。ずっと側にいてほしいと希うように。
「手術が済んで落ち着いたら結婚式をしよう。いずれ、子どだってももうけることができるようになるだろう」
「……ほんとに?」
夢物語を聞かせてもらっているようだった。けれど、夢ではないと彼は力強く頷く。
「ああ、これから先、一緒に年を重ねていきたいんだ。仮初の関係なんかじゃなく、本当の夫婦として……君とずっと」
理人の手が震えていた。その手を架純の方からそっと握る。
すると彼はぎゅっと握り返してくれてから、ゆっくり顔を近づけてきた。
理人の長い睫毛もまた微かに震えている。頬に影が落ちるその一瞬の美しさを、彼の目尻から零れ落ちた光を、架純はきっと一生忘れないと思う。
残りの寿命が少ないかもしれない自分が、彼の人生を縛ってしまうのはよくないのではないかと考えていた。
たとえ助かっても制限があるかもしれない。きっと他の人と一緒の方が幸せになれる。探せばきっと彼に相応しい人はどこかにいるはずなのだ。
けれど――。
「私は、先生の家族じゃないし、恋人でもないし、妻でもない……から」
だからきっと許可されると、架純は伝えようとしたのだが。理人が悲しそうな顔をするので口をつぐんだ。
「この手術が成功すれば、君はもっとずっと長く生きられるようになる」
理人が彼の魂と命をもって架純にその熱を伝えてくる。
架純は無意識に頷く。理人のことは誰よりも信じられた。
そうして握った手を、理人は自分の頬にもっていく。
「架純、俺は君を愛しているんだ」
「……っ」
幻聴ではない。はっきりと耳に触れて、目の前にいる理人が告げてくれている。
架純は彼の想いに応えたくて勢いに任せて声を出した。
「私、もっ」
衝動的に、だが、いつでも許されるなら伝えたかった言葉が飛び出そうとしていた。その、愛している、と発した言葉が擦れる。
でも、ちゃんと理人には届いたようだった。彼が目を細め、顔をくしゃくしゃにする。初めて見る、感情をありのままに出した彼の表情だった。
「回り道をしてごめん……」
理人がそう言い、握っていた手にまた力を込めた。
何度も、何度も、架純の命を繋ぎ留めるように。ずっと側にいてほしいと希うように。
「手術が済んで落ち着いたら結婚式をしよう。いずれ、子どだってももうけることができるようになるだろう」
「……ほんとに?」
夢物語を聞かせてもらっているようだった。けれど、夢ではないと彼は力強く頷く。
「ああ、これから先、一緒に年を重ねていきたいんだ。仮初の関係なんかじゃなく、本当の夫婦として……君とずっと」
理人の手が震えていた。その手を架純の方からそっと握る。
すると彼はぎゅっと握り返してくれてから、ゆっくり顔を近づけてきた。
理人の長い睫毛もまた微かに震えている。頬に影が落ちるその一瞬の美しさを、彼の目尻から零れ落ちた光を、架純はきっと一生忘れないと思う。
残りの寿命が少ないかもしれない自分が、彼の人生を縛ってしまうのはよくないのではないかと考えていた。
たとえ助かっても制限があるかもしれない。きっと他の人と一緒の方が幸せになれる。探せばきっと彼に相応しい人はどこかにいるはずなのだ。
けれど――。