優しすぎる同期にかわいい罠をしかけられました
 「ところで木島さん」
 「うん?」
 「週末の予定は?」
 「いつもどおり。掃除に洗濯、買い物に行ってごはん食べてドラマ見て……大忙し!」

 ときどき、休みの予定を下平くんに訊かれると私は決まってこう答える。
 いつも予定のない寂しい女だと思われているのだろうけど、生活だけで忙しいのは本当のことだ。
 忙しいというよりは、それが私にとって充実した休日でもあるから私としては楽しい。
 
 そういえば下平くんも一人暮らしで家事が好きだと聞いている。
 作った料理の写真を見せてもらったことが何度かあるけれど、どこまでいい男なのだろうかと思うほど美味しそうだった。

 「……それって、誰かと一緒だったり?」
 「私は下平くんみたいに恋人が出来るタイプじゃないよ」

 「え……」

 下平くんが一瞬戸惑う。
 私もすぐさま本人の口から聞いたわけではない噂を口にしてしまったことに気づき、少しだけ気まずさを覚えた。

「……木島さんまで伝わってたんだ」
「隠したかったの?」
「いや……逆かな?木島さんにだけは隠し事とかしたくない」

 そう言って、スーツのポケットからスマホを取り出した下平くんは、サクサク指先で操作をすると見てくれとばかりに画面を私の視界へと運んでくる。
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