優しすぎる同期にかわいい罠をしかけられました
「はい?」
「……うちへ遊びに来ませんか?」
「え、あ……いつ?え?」

 急展開に思考が追いつかずにいる私のそばで、珍しく緊張した面持ちの下平くんはつづけた。
 
「今からでも。……明日でも、明後日でも。俺は予定ガラ空きだから」

 優しくて、コミュ力も高くて、人間関係が良好そうなのに予定がガラ空きだなんて意外に思いながら、私はどう答えるべきかを必死に自分の中に探す。
 そもそも恋人がワンコという下平くんの告白から私の思考はあまり正常には働いていない。
 
「……じゃ、じゃあ帰りにちょっとだけ」

 私がそう答えると、彼は嬉しそうに笑った。
 パソコンの電源を落として、身支度を済ませてオフィスを後にする。
 
 下平くんの家まで電車に揺られて二駅。
 遊びに行くのは初めてだけど、自分のことをよく話してくれる人だからか、知っていることは思ったより多い。
 家に着くまで話に聞いていた近所のお店のことやかわいい公園を下平くんの解説付きで辿るのは楽しかった。

 彼の住んでいるマンションに着き、部屋の鍵を開けると部屋の奥から玄関先まで写真で見ていたシーズー犬が駆けてくる。
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