優しすぎる同期にかわいい罠をしかけられました
「ただいまシズ」

 下平くんがシズと呼ぶメスのシーズー犬は大喜びでかわいかった。
 確かにこれはかわいすぎる恋人だ。
 ある種、勝てる気がしない愛らしさである。
 
 初めて会う私にまで尻尾をふりふり止まらない。
 しゃがみ込んで撫でると、帰って来た下平くんと連れられて来た私と、どちらにも愛らしさをふりまいて忙しそうにする様子がまたかわいかった。

 初めてになる下平くんのお家訪問の緊張感はシズのおかげであっという間に解けていく気がする。

「狭いけど、どうぞ」
「お、お邪魔します……」

 家に上がると確かに広くはないのだろうけど、部屋には物が少なく片付いているからか狭いとも思わなかった。
 デスク代わりにもしているという小さなダイニングテーブルの椅子を引いて座ると、あっという間にグラスに注がれたお水を出される。
 飲食店並みの素早さかと思うほどで驚きながらもお礼を言い、ひとくち口にした。

「シズちゃん飼ったばかり?」
「あーうん。ていうかほんとは兄貴の飼い犬で。でも兄貴が出張多くなって預かること増えたから兄弟で飼ってるみたいになってる」

 下平くんは笑いながらそう話してくれた。
 会話中に足元へと寄って来てくれたシズがかわいくて椅子から降りてしゃがんで撫でると、下平くんが隣にしゃがみこむ。
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