第三幕、御三家の矜持
(四)望めない其の心
≪花咲高等学校第九十九回体育祭、優勝は、赤組≫
閉会式で発表されたその結果は、騎馬戦とリレーという得点源のプログラムの結果から概ね予想される通りだった。呼ばれた赤組団長は、校長先生から恭しくそれを受け取る。これでもかとばかりについている優勝旗のペナントには団長の名前が入るらしい。花高に愛着があるのなら、それはわりと嬉しいプレゼントなのかもしれない。
とはいえ、私を筆頭とした大半の生徒にそんなものがあるわけがなく。加えて一・二年は来年の体育祭もあるので、優勝という成果には “あんまり興味もやる気もない”なんて気持ちがプラスに変わるほどのインパクトもなく。せいぜい応援団が盛り上がる程度で、大半の生徒は閉会式が終わると早々にグラウンドを後にし、HRが終わるや否やシャワーの争奪戦を開始した。いくら設備が揃っているとはいえ、全校生徒のシャワールームを完備するほどではない。生徒会役員には専用のシャワールームがあるけれど。
そして私には、第六西という御三家側の特権がある。素早く荷物を持って第六西へ行くと、クーラーの快適な空気と共に、着替えを片手に持つ松隆くんと入口で鉢合わせた。
「あ、リーダーお疲れ様です」
「あぁ、桜坂もお疲れ。っていっても、俺達ほどじゃないか」
メインイベントで出ずっぱりだったからな、と松隆くんは眉間のあたりを揉んだ。
「松隆くんと桐椰くんは騎馬戦の数も多かったしね」
「まったくだよ。暑すぎて頭痛がする。桜坂、シャワー室の数は一つだからじゃんけん」
最初はぐー、と手を差し出し、無事勝利。松隆くんが苦々し気に顔を歪める。私よりちょっと早く第六西に来たはずなのにじゃんけんで順番を決めてくれて、それなのに負けると嫌そうな顔をするなんて、本当、心が広いのか狭いのか。
「普段なら遠慮するけど、今日はべたべた気持ち悪いから先に使わせてもらいます!」
「はいはい、早くしてね」
しっし、とあしらうように松隆くんは手を振った。“俺達ほどじゃない”という台詞の通り、その表情はとても疲れていた。
閉会式で発表されたその結果は、騎馬戦とリレーという得点源のプログラムの結果から概ね予想される通りだった。呼ばれた赤組団長は、校長先生から恭しくそれを受け取る。これでもかとばかりについている優勝旗のペナントには団長の名前が入るらしい。花高に愛着があるのなら、それはわりと嬉しいプレゼントなのかもしれない。
とはいえ、私を筆頭とした大半の生徒にそんなものがあるわけがなく。加えて一・二年は来年の体育祭もあるので、優勝という成果には “あんまり興味もやる気もない”なんて気持ちがプラスに変わるほどのインパクトもなく。せいぜい応援団が盛り上がる程度で、大半の生徒は閉会式が終わると早々にグラウンドを後にし、HRが終わるや否やシャワーの争奪戦を開始した。いくら設備が揃っているとはいえ、全校生徒のシャワールームを完備するほどではない。生徒会役員には専用のシャワールームがあるけれど。
そして私には、第六西という御三家側の特権がある。素早く荷物を持って第六西へ行くと、クーラーの快適な空気と共に、着替えを片手に持つ松隆くんと入口で鉢合わせた。
「あ、リーダーお疲れ様です」
「あぁ、桜坂もお疲れ。っていっても、俺達ほどじゃないか」
メインイベントで出ずっぱりだったからな、と松隆くんは眉間のあたりを揉んだ。
「松隆くんと桐椰くんは騎馬戦の数も多かったしね」
「まったくだよ。暑すぎて頭痛がする。桜坂、シャワー室の数は一つだからじゃんけん」
最初はぐー、と手を差し出し、無事勝利。松隆くんが苦々し気に顔を歪める。私よりちょっと早く第六西に来たはずなのにじゃんけんで順番を決めてくれて、それなのに負けると嫌そうな顔をするなんて、本当、心が広いのか狭いのか。
「普段なら遠慮するけど、今日はべたべた気持ち悪いから先に使わせてもらいます!」
「はいはい、早くしてね」
しっし、とあしらうように松隆くんは手を振った。“俺達ほどじゃない”という台詞の通り、その表情はとても疲れていた。