第三幕、御三家の矜持
「……妹に何か言った? 」
「優実? 何かってなに?」
ほんの少し予想外の話題だ。そして桐椰くんの質問に答えるなら、もちろんある程度は話した。同じクラスで、ただ家まで送ってくれてるだけの友達だということ。共通の話題があればいいかなと思って料理上手だとはバラしてしまったのだけれど、そのことかな。
「……俺が普段何してるとか」
「桐椰くんが普段何してるかなんて知らないんだけど……家事以外は遥くんのお世話とか?」
「それはしてるけどそういうことじゃねーよ今言ってんのは!」
おにぎりを数口で食べた桐椰くんは、アルミホイルを握りつぶす。カシャだかキシャだか、アルミホイルを丸めたとき独特の音が桐椰くんの手の中から零れて、そんなところからも奇妙な歯切れの悪さみたいなものは伝わってきた。
「その……だからそう、今日の体育祭とか、なんで来てたんだよ……」
「桐椰くんと待ち合わせじゃなかったの?」
「んなわけねーだろ、なんで俺が待ち合わせるんだよ……」
優実も“桐椰くんに会いにきた”と言うだけで待ち合わせたとは言わなかったけれど、どうやらそれは正しかったらしい。こうなってしまうとつくづく二人の関係が謎だ。
「ねぇ……桐椰くん優実とどうなの?」
「どうってなんだよ。どうもしねぇよ」
「えぇー?」
「そんなことより、今日終わったらちゃんと待ってろよ。送ってやるから」
絶対何かあるはずなのに怪しいなぁ、と大袈裟に首を傾げていると、妙なことを言われて「ん?」と濁音のような変な声が出てしまった。新学期になってから私の送迎無視を決め込んでいた桐椰くんが、よりによって今日は送るだと?
「なんで?」
「なんでって……持ち回りなのに今まで総にやらせてただろ。だからいい加減……」
「だから今までは松隆くんにまかせっきりだったのに、なんで今?」
桐椰くんは、理由はあるけど言いたくないと言わんばかりに視線を泳がせ、次のおにぎりを食べているだけだ。なんならちょっと顔が赤い。照れてる……ってことは何かそういう類で言い難いこと……。
「……優実関係だよね?」
「……お前さっきからなんだよ、妹の名前ばっかり出しやがって」
「優実? 何かってなに?」
ほんの少し予想外の話題だ。そして桐椰くんの質問に答えるなら、もちろんある程度は話した。同じクラスで、ただ家まで送ってくれてるだけの友達だということ。共通の話題があればいいかなと思って料理上手だとはバラしてしまったのだけれど、そのことかな。
「……俺が普段何してるとか」
「桐椰くんが普段何してるかなんて知らないんだけど……家事以外は遥くんのお世話とか?」
「それはしてるけどそういうことじゃねーよ今言ってんのは!」
おにぎりを数口で食べた桐椰くんは、アルミホイルを握りつぶす。カシャだかキシャだか、アルミホイルを丸めたとき独特の音が桐椰くんの手の中から零れて、そんなところからも奇妙な歯切れの悪さみたいなものは伝わってきた。
「その……だからそう、今日の体育祭とか、なんで来てたんだよ……」
「桐椰くんと待ち合わせじゃなかったの?」
「んなわけねーだろ、なんで俺が待ち合わせるんだよ……」
優実も“桐椰くんに会いにきた”と言うだけで待ち合わせたとは言わなかったけれど、どうやらそれは正しかったらしい。こうなってしまうとつくづく二人の関係が謎だ。
「ねぇ……桐椰くん優実とどうなの?」
「どうってなんだよ。どうもしねぇよ」
「えぇー?」
「そんなことより、今日終わったらちゃんと待ってろよ。送ってやるから」
絶対何かあるはずなのに怪しいなぁ、と大袈裟に首を傾げていると、妙なことを言われて「ん?」と濁音のような変な声が出てしまった。新学期になってから私の送迎無視を決め込んでいた桐椰くんが、よりによって今日は送るだと?
「なんで?」
「なんでって……持ち回りなのに今まで総にやらせてただろ。だからいい加減……」
「だから今までは松隆くんにまかせっきりだったのに、なんで今?」
桐椰くんは、理由はあるけど言いたくないと言わんばかりに視線を泳がせ、次のおにぎりを食べているだけだ。なんならちょっと顔が赤い。照れてる……ってことは何かそういう類で言い難いこと……。
「……優実関係だよね?」
「……お前さっきからなんだよ、妹の名前ばっかり出しやがって」