第三幕、御三家の矜持
「でも月影くんのほうが人気そうなのにね。ほら、成績いいし、多分授業態度もいいでしょ? 桐椰くん達はサボりそうだけど」

「月影くんは頭良すぎるから、先生も困らされちゃうんだよー。変に質問とか来られたりするとね」


 なるほど、その発想はなかった。でもその点に関しては月影くんは悪くないな。


「あ、桐椰くんは応援団の助っ人やらされるんだって?」

「そうそう、一人欠員出ちゃったとかなんとか。桐椰くん真面目だから踊り完璧だろうし」

「欠員なの? なんだー、てっきり団長の戦略かと思ったー」


 そしてふーちゃんの発言に耳を疑う。なんだって?

「ほらー、やっぱりイケメンが応援団入ってるほうが審査員受けいいじゃん?」

「え……、いやでも、ほら、審査員も女とはいえ先生なわけですし……」

「そんなの関係ないってー。それに観覧席から無作為に何人か選ぶみたいだよ、審査員。おばちゃん達からしたらイケメン一択だよー」


 つい数秒前の自分の納得を撤回してまでフォローに入ったというのに、その甲斐なし。しかも審査員には一般人も混ざってるのか……。御三家を獲得していない青組と黄組の敗北オーラが改めて分かった。でも黄組は (見た目だけは)とても美しい蝶乃さんがいるし、チアだし、おじさん達には人気がありそうだけどな。


「ま、だから戦略かなーって思ったんだけど。ちゃんと一人足りないんだねー」

「いや……どうなんでしょうね……」


 素直な桐椰くんなら騙されても頷けるし……。いやでも桐椰くんが素直で騙されやすくて御三家の中で唯一扱いやすいなんてことを知ってるのは私達だけだ。多分ちゃんと一人熱中症で倒れたんだろう。……多分。

 そうこうしているうちに大盛況の白組応援プログラムが終了し、観客席にいた女子が退場口にごそっと移動する。絶対松隆くんと月影くん待ちだな……。なんだか自分の参加している行事が何なのか分からなくなってきた。御三家の写真撮影会かお披露目会だったかな。


「……なんでこんな学校に御三家なんて揃っちゃったんだろう……」

「迷惑そうだねー。いいじゃん、楽しくてー。偶々イケメンが三人いてー、その三人が仲良しでー、その三人の癖が強かっただけだよー」


 確かにただの偶然の重なり合いだ。最大の問題はその癖の強さだけど。

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