第三幕、御三家の矜持
「何もなわけないだろ。ちゃんと下着にあたるシャツは着てるし、大体の白組男子はそう。駿哉みたいに莫迦丁寧に白シャツ着こんでるヤツのほうが珍しいだけ」


 笑顔だけれど舌打ちでもされそうな口調だった。因みに月影くんは「だが不意に袖の中が見えたときにシャツが見えないとおかしいだろう」なんて相変わらず莫迦みたいに真面目なコメントをしている。


「じゃあファンサービスっていうのは……」

「タンクトップだからね」

「あぁ……」

「赤組はいいよね、浴衣涼しそうだし。男も上半身は(さらし)で済むし」

「去年の遼が傑作だったな。応援プログラム終了と同時に女子に(たか)られセクハラを受ける始末」

「あぁ、男子更衣室に逃げてきてたよね。あれは笑った」


 なるほど、肌色が見えている分、合法的に触れるときに触っておこうということですか。はたして見えている肌色なら触ることも合法的なのかどうかというのはさておき、桐椰くんが女子に囲まれて真っ赤になっている様子は簡単に目に浮かんだ。そして二人が安全地帯からその様子を見て笑う姿も。


「じゃ、そういうわけで。そろそろ赤組なんだろ、いってらっしゃい」

「あ、そっか行かなきゃ」


 松隆くん達と別れ、ふーちゃんを連れて入場口へ向かう。今は緑組の応援プログラムの最中だ。緑組の衣装は、白に近い灰色の着物に深緑の長羽織だ。激しい動きができない衣装なので、緑組の応援プログラムは毎年日本舞踊っぽいのだとかなんとか。因みに鹿島くんを獲得しているので、青組と黄組ほどの敗北感はないし、寧ろ覇気に溢れている。つくづく、生徒会長様の力はよく分からない。

 それにしても、松隆くんとふーちゃんの会話は、一体どういう意味だったのか。探るようにちらと視線を向けると、ふーちゃんは溜息を吐いた。


「どうしたの?」

「ううん……松隆くんと話してると、やっぱり三次元って夢を壊すようにできてるんだなって悲しくなっちゃって……」


 ……ふーちゃん……。


「そ、そっか……」

「体育祭に学ランなんて夢しかないのに……まぁあたし松隆くんの顔好きじゃないからいいんだけど」

「それ多分松隆くんちょっと怒るヤツだよ、言っちゃだめだよ」


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