第三幕、御三家の矜持
八、貴方が探した涙の行方

(一)貴方が求めた証

『雅、知ってる? テニスでゼロ点を“ラブ”っていう理由』

『なにそれ、知らない』

『諸説あるんだけどさ。一つの説に、“タダ”と同じ意味だからっていうのがあるんだ』

『タダって、ゼロ円のタダ?』

『そう。ゼロ円のタダと同じ。対価関係なしに相手に点数を与えるから』

『それがなんでラブなの?』

『愛は無償で与えられるものだから』

『えぇー?』


 雅は小馬鹿にしたように嗤った。

『何言ってんだよ。愛なんて、金が入るからとか男繋ぎとめる役に立つからとか、見返りがないと与えられないもんなんだぜ? そんなこと言うなんて、偉いヤツって意外とバカなんだな』
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