第三幕、御三家の矜持
 鳥澤くんの説明による事前情報とプロローグとで、大体内容を把握した。ひょんなことから、二百余歳の魔女が孤児を三人拾い、育て始める。三人は、贅沢な教育を受ける貴族に負けないどころかそれを(しの)ぐ勢いで立派に成長し、エリート試験──多分モデルは科挙(かきょ)だ──をクリアして、朝廷に勤めるようになる。同期の貴族達のやっかみや、孤児に対する侮蔑(ぶべつ)を隠すことのない上司の嫌がらせを受けながらも出世していく少年たち。あまりの優秀さに、彼等はそれぞれが特有の呼び名で称えられる一方で、「出来過ぎて気持ち悪い、まさか魔女の子じゃあるまいな」なんて揶揄される。

 なんか御三家みたいだな、と見ながら思ってしまった。しかも、その三人──エメ、グレン、ロイーズのキャッチコピーは、それぞれ“最恐の美しい軍師”“一騎当千の将軍”“神さえ恐れる最年少尚書(しょうしょ)”。お陰で、私の頭の中でエメ=松隆くん、グレン=桐椰くん、ロイーズ=月影くんの図式が出来上がってしまった。

 となると、ラシェルなんて名乗ってる魔女は私だ。能天気でドジで間抜けな魔女。ふむ、まぁなしではない。

『ラシェル様、俺は遠征から帰りましたけど、結婚のお返事はまだですか?』

 が、成長したエメが残念ながらラシェルにプロポーズしてしまった。ダメじゃん魔女を私にしちゃ! 告白とプロポーズとか完全に一致じゃん!

 因みに魔女は拒否。エメとグレンの間ではエメの抜け駆けのせいで喧嘩が始まるもロイーズは無視。やはり御三家と完全に一致……。ううん、とラシェルの状況をまるで自分のことのように頭を抱えてしまった。

 ただ、物語の中盤では戦争が始まるので、現実離れしたその描写のお陰でちょっとだけ御三家とのシンクロが薄れた。物語では、エメの仕切る軍が敗走を繰り返し始めたこと、そしてグレンが相手軍の捕虜となったことから一気に緊迫感が増す。エメが軍師をやれば負けなし、グレンがいれば最後には勝てるとそれまで散々持て(はや)されていただけに信用はガタ落ち。二人を頼りにしていた兵士は掌を返したようにエメに不審な目を向けるようになる。

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