第三幕、御三家の矜持
 確かにそうかもしれないね、と頷いていると「あっ、でも今回のはちゃんと友達のお墨付きだから!」と慌てて付け加えられた。男の子でカフェに詳しい人があまりいないのなら、仲のいい女の子に訊きでもしたのかもしれない。

 鳥澤くんが案内してくれたのは映画館から十分くらい歩いたところにあって、曰く「まだ全国でも数店舗しかないんだって」とのこと。それにしては “プチ・デジュネ”なんて店名には見覚えがあって、看板を見ながら記憶を辿れば、数年前に「遂に日本に上陸! 一日の幸せはおいしい朝食から!」なんて煽りつきで特集されていたお店だ。雅の家で一緒に見た覚えがある。

 雨のせいでもともと客足が遠のいているのか、外から見た店内はスカスカしていた。お陰でお店の中に入るときの鳥澤くんの横顔はほっと安心しているように見えた。案内されるがままに窓側の席に着いてバッグを置けば、「いらっしゃいませ」と店員さんが次のお客さんを出迎える。御三家、揃ってご来店。本当にストーカーみたいだな……。


「桜坂さん、何か食べる?」


 メニューを差し出してもらって、慌てて視線を戻す。写真が数枚載っているだけのシンプルなメニューでは、フレンチトーストとパンケーキが推されていた。


「……お腹すいてる?」


 ガッツリ食べるには中途半端な時間だったせいで、鳥澤くんの声が少しだけ申し訳なさそうになる。でも、一ページ捲ればカフェにありがちなケーキセットもちゃんとある。そういえばお店の入口にケーキが何種類か並んでたっけ。


「ケーキでもいいんじゃない?」

「あ、本当だ……。そっか、ケーキもあったのか」


 お陰でケーキセット二人分に落ち着いた。注文まで終えて落ち着いたところで少し店内を見回す。スカスカしているといっても当然何組かのお客さんはいる。メインのお客はやっぱり女の人らしく、女の人同士の組がいくつかいた。それから、パソコンを開いて仕事をしているらしきサラリーマン風のオジサン。作業で長居をするタイプのカフェじゃない気がするけどな。そして高校生っぽい男女の組が一つと、男二人組が一つ。あとは男三人組が一つ……。


「男だけだとちょっと抵抗あるからさ、桜坂さんがいてくれてよかった」


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