第三幕、御三家の矜持
 雅は私のことを何だと思ってるんだろう。どこぞのお姫様とでも思ってるのかな。


「しかも監視って……あぁ、御三家と生徒会って仲悪ぃんだっけ? そしたら亜季から落とそうとするのも順当っちゃ順当か。俺でも怪しむかなぁ」

「雅……」

「だって亜季って他人への距離の取り方半端じゃないじゃん。告白したところで付き合えるわけないよ」


 雅まで私に失礼なことを言うのかと思ったら、今までとは違う角度からの考察が来た。思わず口を噤んでいると「つか、だからってデートをストーカーすんのおかしくね?」と至極まともな意見もきた。私も激しく同意する。


「つか桐椰とかフツーにフレンチトースト食ってんじゃん。季節限定とか食いやがって」


 桐椰くん……。そうか、桐椰くんは季節限定・リンゴと梨のフレンチトーストにしたんだね。やっぱりしっかり満喫してるね。


「松隆と仲良く分け合ってるし、なんだよアイツらホモかよ……」


 相変わらず仲良いな、あの二人……。月影くんは横から食べたりしないだろうけれど、松隆くんは「一つ頼むと多いからお前のちょうだい」とか言いそうだ。


「ね……、そんなことより雅、その頭……」

「や、だから俺もいい加減真面目にやろうと思って……。最近ハイドに勉強も教えてもらってるんだぜ」


 ハイド……杯戸。月影くんが嘘を吐くのに使った友達の名前だっけ。苗字で呼び捨てているということは、ジキルとハイドからとってニックネームにしてるのかもしれない。


「今日もハイドと来てんだよ。ほらあそこ」


 雅に示されて首を傾けると、まさかの鳥澤くんの真後ろにある二人掛けのテーブルに男子が座っていた。焦げ茶色の髪をこざっぱりと整えていて、スポーツでもやってそうな見た目だ。一重だけど目はぱっちりしていて、私と目が合うと軽く会釈をされた。同じく会釈で返す。


「雅、近くにいたんじゃん……。そんな頭のせいで気づかなかったよ、本当」

「本当は黒にするつもりなかったんだけどさ、()って生えたら黒だし、わざわざ染め直さなくてもいいかなって」

「……剃ったの?」

「染めるより安いじゃん」


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