第三幕、御三家の矜持
「やることなさそうだよね。知らないけど」
「……どうなるんだろ、生徒会」
すとん、とソファに座る。松隆くんが「漸く空いた」なんてぼやきながら隣に座った。
「どうなるって?」
「……だって希望役員とか廃止だよ」
「今まで甘い汁を啜ってたヤツがしっぺ返しでも食らえば多少面白いかもしれないけど、別に何も変わらないんじゃない」
「どうして? もうヒエラルキーは……」
「ないな、目に見える形では」
ペラ、と紙を捲る音が聞こえた。本を読みながら私達の会話を聞いて返事までするなんて、月影くんは器用だ。
「だが、わざわざ逆らったところで得をしないからな。今まで生徒会役員を名乗っていた者達の家が裕福だという事実は何も変わらない以上、肩書の有無以上に変わるものはないだろう」
「でもだったらなんで鹿島くんは役員制度を変えるって」
「花高の生徒会役員ってものに価値をつけたいんじゃない。なんでそうしたいのか、って話だから、トートロジーって言われても仕方ないけど」
そういえばふーちゃんもそんなことを言っていたような……。でも松隆くんが付け加えた通り、なんでそうしたいのかは分からないんだな。
「ま、だから俺が楽しむのはせいぜい蝶乃の顔くらいだな」
「そんな落選確定みたいに言わないでも」
「桜坂は、支持率の高いヤツが指定役員になるとでも思ってるの?」
鼻で笑う松隆くんの顔にきょとんとした。そう思っている、当たり前だ。だって指定役員だけは生徒が指定するからそう呼ばれる役員なんだって説明を聞いた。
「支持率をどう定義づけるかの差だな。他生徒から慕われていることを意味するか、役員となった際に他生徒に恩恵をもたらすと思われていることを意味するか」
月影くんの説明のせいで益々意味が分からなくなった。ソファに膝をついて月影くんのほうを向くけれど、やはり本から顔を上げない。
「この学校でいう生徒会の恩恵とはなんだ」
「え、何も感じたことないんですけど」
「自分じゃなくて一般生徒の立場で考えるんだよ。敵に回せば恐ろしいけど、後ろ盾になってくれればいい味方って思ってるヤツが大半だ」
「……どうなるんだろ、生徒会」
すとん、とソファに座る。松隆くんが「漸く空いた」なんてぼやきながら隣に座った。
「どうなるって?」
「……だって希望役員とか廃止だよ」
「今まで甘い汁を啜ってたヤツがしっぺ返しでも食らえば多少面白いかもしれないけど、別に何も変わらないんじゃない」
「どうして? もうヒエラルキーは……」
「ないな、目に見える形では」
ペラ、と紙を捲る音が聞こえた。本を読みながら私達の会話を聞いて返事までするなんて、月影くんは器用だ。
「だが、わざわざ逆らったところで得をしないからな。今まで生徒会役員を名乗っていた者達の家が裕福だという事実は何も変わらない以上、肩書の有無以上に変わるものはないだろう」
「でもだったらなんで鹿島くんは役員制度を変えるって」
「花高の生徒会役員ってものに価値をつけたいんじゃない。なんでそうしたいのか、って話だから、トートロジーって言われても仕方ないけど」
そういえばふーちゃんもそんなことを言っていたような……。でも松隆くんが付け加えた通り、なんでそうしたいのかは分からないんだな。
「ま、だから俺が楽しむのはせいぜい蝶乃の顔くらいだな」
「そんな落選確定みたいに言わないでも」
「桜坂は、支持率の高いヤツが指定役員になるとでも思ってるの?」
鼻で笑う松隆くんの顔にきょとんとした。そう思っている、当たり前だ。だって指定役員だけは生徒が指定するからそう呼ばれる役員なんだって説明を聞いた。
「支持率をどう定義づけるかの差だな。他生徒から慕われていることを意味するか、役員となった際に他生徒に恩恵をもたらすと思われていることを意味するか」
月影くんの説明のせいで益々意味が分からなくなった。ソファに膝をついて月影くんのほうを向くけれど、やはり本から顔を上げない。
「この学校でいう生徒会の恩恵とはなんだ」
「え、何も感じたことないんですけど」
「自分じゃなくて一般生徒の立場で考えるんだよ。敵に回せば恐ろしいけど、後ろ盾になってくれればいい味方って思ってるヤツが大半だ」