第三幕、御三家の矜持
「そうかもだけど、そんなに気にならないと思うけどなぁ」


 金髪じゃない桐椰くん。ダークブラウンの髪の桐椰くん。なんだか知らない人が隣にいるみたいで、妙にもやもやした。

 それなのに、三人はいつも通り。だらだらと本を読んだり漫画を読んだり、勉強したりで適当に時間を潰して、「そろそろ帰るか」なんて言う。本当に御三家は曲者(くせもの)しかいないというかなんというか……。


「今日の送る当番は遼に任せていい? お前がここ最近いなかったせいでずっと俺が送ってたし」

「別にいいけど」


 つくづく、松隆くんって私のことどう思ってるのかな……。私と一緒にいる時間に執着するわけでもないし、寧ろお送りに関しては面倒くさそうな態度をみせるし……。体育祭での発言もあったせいで、松隆くんの真意は最近ますます謎だ。


「おい帰らねーの?」

「……帰ります」


 でもそれは、今回に限っては桐椰くんも同じことだ。ぷぅ、とソファの上で頬を膨らませていても仕方がないので、桐椰くんに促されるまま第六西を出る。松隆くんと月影くんが逆方向でいなくなるまで、三人は誰がどの役職に就くかなぁなんて話してた。ただ、三人の──というか松隆くんの関心事といえば、二つの席しかない副会長に桐椰くん、蝶乃さん、南波くんの三人がいることだと思うのだけれど、その点に関しては誰も何の予想も立てなかった。


「……ねぇ桐椰くん、なんで金髪やめたの?」


 帰り道、桐椰くんと二人になった後に訊ねた。「んー?」と桐椰くんはなんでもなさそうな声で返す。


「だって副会長が金髪は駄目だろ」

「……そうかもしれないけどさ。髪明るい人は結構いたし、副会長になってから直すのでもよさそうじゃん。当選は先生が決めるものでもないし」

「そうかもしれないけど、まー、副会長に立候補するときは髪染め直そうって思ってたし」


 別にいいよ、なんて返ってきても、やっぱりもやもやする。理由が釈然としないというより、やっぱり金髪じゃない桐椰くんが桐椰くんじゃない感じがしてならないのだ。


「……でも金髪に拘ってたじゃん?」

「あー……まぁ、そうだな」

「なんでだったの?」

「……金髪じゃないと会えないのかなって思ってた人がいたから」


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