第三幕、御三家の矜持
「……桐椰くんって本当……」


 お人好しだなぁ、と言おうとして言わずにおいた。訂正されたら困るから。さっきと同じだ。桐椰くんから困る返事をされることばかり気にしている。お陰で続ける言葉が迷子になってしまった。一緒に話題も迷子だ。普段桐椰くんと何の話をしていたのか分からなくなる。


「……まぁ桐椰くん、副会長になったらきっと大変ですよ。桐椰くんのことだから体よく雑務押し付けられるだろうし」

「体よくとか言うな。実際生徒会って何の仕事してんだろーな。全然イメージ湧かねーや」


 辛うじて口にした話題はちょっと早口になってしまったけれど、桐椰くんがそれをとやかく言うことはなかった。
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