第三幕、御三家の矜持
「それは知ってる。告白でもされたの?」

「……されましたね」

「へーえ。俺達の仲間だって公言してるのにいい度胸だな」


 松隆くん、口調が崩れてるよ気を付けて。鳥澤くんの立ち去った方向を見る目が殺気立ってるよ、気を付けて。嘘でもいいからいつもの笑顔浮かべるように気を付けて。そんなことを心の中で唱えながらちょっとだけ首を捻るのは、松隆くんが鳥澤くんに怒った理由だ。“俺達の仲間だって公言してるのに”というのは、松隆くん個人の感情とは関係がない……? ただそんなことは問い質せないので、「中入るだろ?」と促されるがままに一緒に第六校舎の中に入る。制服を着た松隆くんを背中から見ていても、目に見えて分かる傷跡はもうなかった。


「で、告白断ったんだろ?」

「さも当然のように言いますね……」

「俺がフラれてアイツがオーケーだされる理由が分からない」


 気まずい話題のはずなのに、松隆くんは淀むことなくきっぱりとそう言い放った。どこから溢れる自信なのか分からないし、そもそもそんなことを口にする理由が分からないのでリアクションに困る。


「というか、妙なところで告白されたんだね」

「あ、うん。でも確かに人気(ひとけ)はないから恰好の告白場所ではあるかなって……」

「告白してるヤツ見たことないけどね」


 言い方に棘がある。頭おかしいんじゃねーの、なんて評価まで聞こえてきそうだ。なんだか益々鳥澤くんが不憫になってきた。第六西の扉を開けると、ソファに座っている桐椰くんが私に目を向ける。


「大丈夫そうだったな。良かったじゃねーか、罠じゃなくて」

「あぁ、お前が見張ってたんだ?」

「あぁ。外出ようとしたらお前が来たの見えたから待機してた」


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