第三幕、御三家の矜持
だって、藤木さんが御三家の中でも桐椰くん推し──桐椰くんを好きだというのなら、桐椰くんの元カノの蝶乃さんのことが鼻につかないはずがない。それにも関わらず親友を名乗っていたとなれば、悪意とまではいわずとも打算を感じる。
あぁ、妙なことに巻き込まれてしまったな……、なんて、自分が当事者とは思えないくらい冷めた感想を抱いてしまう。打算で繋がってる女子の面倒臭さなんて、女の子の私にはよく分かってる。
「なにそれ、御三家に怒られたら全部あたしのせいにしようってわけ?」
「なんでそんなこと言うの? 本当に歌鈴ちゃんが言ったんじゃん」
「だからそうやって証拠がないのをいいことにあたしのせいにしようとしてるんでしょ。そうよね、月影くんが持ってきた録音にはきっと未海がやった話なんて入ってないもの。よかったわね、一番最初の話が聞かれてなくて!」
「そんなのわかんないじゃん! もし月影くんが──」
「あのさぁ、悪いんだけど、そっちの喧嘩は今度にしてくれない?」
きっと松隆くんはげんなりとした白い目で二人を見つめていたのだろう。私からは顔を見ることはできないけれど、その声を聞けば表情も容易に想像できた。
「俺達にとっては蝶乃も藤木も同じなんだよ、わざわざ手の込んだ嫌がらせをした時点でね。だからお前達が喚くことは一つもないわけ」
「……さっきから言ってるでしょ。直接やったのと唆したのとじゃ全然違う」
「お前マジで話通じねぇんだな」
食い下がる蝶乃さんに桐椰くんはいい加減呆れ声だ。因みに蝶乃さんの隣で藤木さんはさめざめと泣いているけれど、御三家がそれに触れる気配はない。私だって、ここで藤木さんが泣いていようがいまいが興味はない。
そんな表情をしていたせいか、僅かに泣いた後の蝶乃さんの目が、嘲りを含んで私を見た。
「でも肝心の桜坂さんはどーでもよさそうな顔してるじゃない。笑っちゃうわ、あんなことがあっても存外平気なのね?」
「……まだ言うのか、お前」
「桐椰くんは黙っててよ」
冷え冷えとした桐椰くんの声に、もう蝶乃さんが怯むことはなかった。散々に怒られて──フラれて、すっきりしたとでもいうのだろうか。
あぁ、妙なことに巻き込まれてしまったな……、なんて、自分が当事者とは思えないくらい冷めた感想を抱いてしまう。打算で繋がってる女子の面倒臭さなんて、女の子の私にはよく分かってる。
「なにそれ、御三家に怒られたら全部あたしのせいにしようってわけ?」
「なんでそんなこと言うの? 本当に歌鈴ちゃんが言ったんじゃん」
「だからそうやって証拠がないのをいいことにあたしのせいにしようとしてるんでしょ。そうよね、月影くんが持ってきた録音にはきっと未海がやった話なんて入ってないもの。よかったわね、一番最初の話が聞かれてなくて!」
「そんなのわかんないじゃん! もし月影くんが──」
「あのさぁ、悪いんだけど、そっちの喧嘩は今度にしてくれない?」
きっと松隆くんはげんなりとした白い目で二人を見つめていたのだろう。私からは顔を見ることはできないけれど、その声を聞けば表情も容易に想像できた。
「俺達にとっては蝶乃も藤木も同じなんだよ、わざわざ手の込んだ嫌がらせをした時点でね。だからお前達が喚くことは一つもないわけ」
「……さっきから言ってるでしょ。直接やったのと唆したのとじゃ全然違う」
「お前マジで話通じねぇんだな」
食い下がる蝶乃さんに桐椰くんはいい加減呆れ声だ。因みに蝶乃さんの隣で藤木さんはさめざめと泣いているけれど、御三家がそれに触れる気配はない。私だって、ここで藤木さんが泣いていようがいまいが興味はない。
そんな表情をしていたせいか、僅かに泣いた後の蝶乃さんの目が、嘲りを含んで私を見た。
「でも肝心の桜坂さんはどーでもよさそうな顔してるじゃない。笑っちゃうわ、あんなことがあっても存外平気なのね?」
「……まだ言うのか、お前」
「桐椰くんは黙っててよ」
冷え冷えとした桐椰くんの声に、もう蝶乃さんが怯むことはなかった。散々に怒られて──フラれて、すっきりしたとでもいうのだろうか。