第三幕、御三家の矜持
 雅は一言で済ませたけれど、月影くんからのLIMEは「桜坂の居場所を知っているか」「一緒か」「見たらすぐに連絡しろ」「遼相手でもいい」「早く連絡しないと遼に殴られるぞ」「総に何をされても文句は言えんぞ」ときっかり一時間おきに連絡が入っていた。多分授業が終わるごとに連絡してたんだろうな。おそるおそる私もLIMEを開くと、桐椰くんからも松隆くんからも月影くんからも大量のLIMEが来ていた。

 誰からのLIMEもなんとなく開くのが怖くて躊躇っていると、優実からのLIMEもあることに気が付いた。表示が「桜坂優実がスタンプを送信しました」となっているので、メッセージ内容も見ようとタップする。


「やべー、サイレントにしてて気づかなかったんだよな。どーする、月影に一緒にいるって言っていい?」


 優実からは「遼先輩からお姉ちゃんどこって聞かれたけど、学校行ってないの?」というメッセージと、首を傾げるウサギのスタンプが来ていた。二時間前だ。桐椰くんから連絡が来た……? 桐椰くんがわざわざ優実に連絡した理由は何だろう。優実なら知ってると思ったのか、それとも…… 。


「亜季?」


 訝しむ雅の声でハッと顔を上げる。ぼんやりしていた。


「ごめん、なんだっけ?」

「月影に亜季と一緒にいるって言っていい? この感じだと桐椰に連絡するのが一番いいんだろうけど……」

「あー、うん、多分そうだよね……」

「ま、桐椰の連絡先知らないし、俺から連絡ほしくないだろうし、別にいっか」


 いつから御三家は亜季の保護者になったんだろうなー、と雅はぼやきながら文字を打つ。確かにその通りだ、とおそるおそる月影くんのLIMEを開くと「どこにいる」「遼がうるさい」「遼が心配している」「いい加減にしろ、心配をかけるな」とやっぱり一時間おきに連絡があった。続いて松隆くんのLIMEを開くと「学校休みって、風邪?」「妹さんは桜坂が今朝もいつも通りに家を出たって言ってたらしいんだけど、どこにいってるの?」と幾分穏やかなメッセージ。そして桐椰くんからは「風邪?」「なんで来てねーの」「どこいんの」「菊池と一緒か?」「探してるから連絡くれ」と時間のばらついたメッセージ。

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