第三幕、御三家の矜持
九、ないものねだりの結末

(一)その選択が詰んでいて

 球技大会の日は、スポーツの秋に相応しい爽やかな秋晴れになった。行われているのはバスケ、バレー、テニス、野球、サッカー、卓球とクラスマッチの時と変わり映えしないけれど、一応球技限定だ。ついでに、試合内容はフェアに近くなった。指名役員以下が廃止されたことの成果が少しずつ現れている。でもそんなこととは関係なく、私はやはりテニス部員と当たってで二回戦敗退をした。

 いまは桐椰くんが参加している野球の試合を観戦している。相変わらず御三家ファンはキャッキャと湧いていて、私が座ることを許されたのは選手の顔も見えないくらい離れた木陰だった。

 そんな場所に、わざわざやってくる人がいるものだからそちらを見る。こういう時に現れるひとは鹿島くんと相場が決まってて、実際鹿島くんだ。何かあるたびに鹿島くんは何でも知っていて、挙句それをわざわざ私に告げにくるものだから、どうせ今日も何か話しに来るんだろうなとは思っていた。が、それでも溜息と共に出迎えずにはいられない。


「何か用ですか、生徒会長。ていうかテニスの試合はいいんですか?」

「あぁ、あとは決勝で松隆と当たるだけだからね」


 松隆くんが順調に勝ち進んでいるのは知っていたけれど、今度は決勝で当たるのか……。松隆くんも鹿島くんがテニスに出ると分かっててテニスを選択するあたり負けず嫌いというかなんというか。

 決勝戦は観戦する人が多いので開始時刻が決まっていて、それまではまだ少し時間がある。きっとそれまで暇で、私にちょっかいでもかけにきたんだろう。実際、鹿島くんは私のすぐ隣に立つ。


「……何?」

「この間は大騒ぎだったらしいね。君が無断欠席なんてするから」

「担任には休むと言いました」

「御三家に言わなかったのはなぜなんだ?」

「言う必要がないと思ったから」

「そうかな? 君が何の連絡もなく休めば、何かあったんじゃないかと、少なくとも桐椰が騒ぎ出すのは目に見えてただろ?」


 構ってちゃんだね、と言われている気がして睨み付けるけれど鹿島くんはこちらに視線を寄越さない。代わりに、その視線は二年四組と三年一組の野球に向けられている。
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