第三幕、御三家の矜持
 更に流れ的に間違いなく松隆くんも一緒に帰宅……! タイミングが悪魔でしかない。


「いるなら帰ろうよ駿哉」


 そして珍しく月影くんを帰りに誘う。


「いや、桜坂が一緒に帰ってほしいらしいので今日は桜坂と遼と菊池と帰る」

「ツッキー!?」

「あぁ、遼もいるの? じゃ俺も一緒に帰る」

「松隆くんいつもは一緒に帰るーなんて可愛いキャラじゃないよね? タイミング合えばなんとなく一緒に帰るってだけだよね? なんで今日に限って一緒に帰るの?」


 そして月影くんの罠により奇妙過ぎる五人で一緒に帰ることになってしまった……。それだというのに、松隆くんはいつも通りの平然とした表情だ。


「遼は?」

「シャワーを浴びている」

「ふーん。菊池はなんで来るの?」

「俺と勉強会をする予定でな。お前も英語くらい教えてやったらどうだ」

「やだよ、人の勉強なんて見たことないし。ていうかなんで勉強教えてるの?」

「学力が中学生レベルだったので」

「教える理由にはならないでしょ、それ」

「根性があったんでな」

「ふーん」


 二人は雅の話をしていたかと思えば「そういえばこの間から『白い巨塔』見てるんだけど」「どちらだ?」「新版。やっぱりドイツのシーンは痺れるよね」「アウシュビッツか。あのアレンジはいいな」なんていつも通りに雑談に移った。なんなんだこの二人……! 狼狽えているのは私だけ……!

 そうして桐椰くんがシャワーを浴び終えてやってくるまで二人はドラマの話で盛り上がっていた。というか、どうやら月影くんの好きなドラマだったらしく、驚くほど饒舌な月影くんには目を疑った。

 髪まで乾かし終えた桐椰くんは「なんか増えてんな」と目をぱちくりさせた。


「遼、クラスの打ち上げあるでしょ? 行かなくていいの?」


 全員あるよね……? 白い目で松隆くんを見るけど、桐椰くんがそのツッコミをすることはなく「んー、んー。夕飯当番だけど遥に何も言ってねーし」なんてズレた返事をする。

 月影くんはLIMEを確認してすっくと立ちあがった。


「菊池が着いた。帰るか」

「マイペース!」

「なんで菊池?」

「今日は勉強会をする予定でな」

「うん……?」

「お前は国語でも教えたらどうだ」

< 271 / 395 >

この作品をシェア

pagetop